必須特許ポートフォリオ論とは,「その製品にかかる必須特許を取得することが市場参入への切符である」という命題で表現される理論のことをいいます。
ここでいう「必須特許」とは,ある技術を実施するため,もしくは,ある製品を生産するためにどうしても実施せざるを得ない特許のことを指します。

ここで,ある一製品多特許型の製品にかかる市場を大円で表現します(下図)。
この製品を製造するためには複数の必須特許が必要で,A,B,Cの3社がこれらを保有しているとします(それぞれの企業が取得している必須特許を●で示している)。

必須特許を保有しているA,B,C社はお互いに他社の特許を実施しあっているので,特許権を行使されても行使し返せばいいという関係になり,結果として,特許リスクなく市場の中で事業ができるのに対し,必須特許を保有していないD社は特許リスクなくしては事業を行えないことになります。

この議論から分かるように,一製品多特許型の製品の場合は,「必須特許を取得することが市場参入への切符」であり,必須特許を取得できなかった者は市場参入できないという結論が導かれるのです(必須特許ポートフォリオ論)。

詳しくは,「必須特許ポートフォリオ論とこれに基づくM&Aにおけるリスク考察に関して」(知財管理誌Vol.54, No.2 (2008.3))

技術法務のススメ(日本加除出版 (2014/7/1))をご覧ください。