【平成16年4月20日(大阪地裁 平成15年(ワ)第2226号・平成14年(ワ)第13569号)】

【概要】
「Career-Japan」の商標権を保有する原告が、「Careerjapan.JP」のドメイン名を使用する被告の行為が商標権侵害に該当するとして、ドメイン名等の使用差止め、損害賠償等を求めた請求が認容された事例。

【キーワード】
ドメイン、商標的使用

1.判旨

 被告が、平成14年5月より被告サイトを立ち上げ、同サイトにおいて平成15年3月まで被告標章1を使用していたことは、前記第2の2(4)イのとおりである。この被告標章1の使用につき、被告は、ドメイン名として使用していたものであって、商標として使用したものではないと主張する。しかし、証拠(甲第3号証)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、被告サイトにおいて、「Careerjapan.jpは日本で働きたい外国人を応援します。」との文言を掲載していたことが認められ、また、被告サイトは、主に外国人留学生を対象として、求人事項や採用希望企業の活動内容、将来像、採用傾向等の情報を提供すること等の業務を行ってきたことが認められる。そうすると、上記使用態様は、単にドメイン名として使用するものではなく、被告標章1を自らのサービスを他のサービスと識別するための標識として使用するものであったということができる。したがって、被告は、被告サイトにおいて、被告標章1を商標として使用していたというべきである。

2.検討

 ドメイン名の使用が商標的使用態様に該当するかどうかについて、リーディングケースとなる東京地判平成13年4月24日〔J-PHONE事件〕では、商標的使用態様に該当するには、ドメイン名の使用態様が、①ドメイン名に使用しているのみの場合、あるいは、②ドメイン名に使用し、ウェブサイトで商品・サービスを提供している場合だけでは不十分で、「当該固有名詞の主体がドメイン名の登録者であると考える」事情として、「ドメイン名が特定の固有名詞と同一の文字列である場合など」、例えば、③ドメイン名に使用し、ウェブサイトで商品・サービスを提供し、ドメイン名を商品・サービスに使用していることが必要であることを判旨しているものと解釈されます。現に、J-PHONE事件では、ウェブページ上で、ドメイン名の一部である「J‐PHONE」が使用されていること、ドメイン名「j-phone.co.jp」とウェブページ上の表示「J‐PHONE」の関連性の大きく2つの事情から、ドメイン名の商標的使用態様性を肯定しています。
 本件でも同様に、ウェブサイト上で、Careerjapan.jpの文言を掲載していて、サービスを提供していた事情を重視して、ドメイン名の商標的使用態様性を肯定していますので、本件の判断は、J-PHONE事件の判断と整合しているものと考えられます。

以上
弁護士・弁理士 杉尾雄一