【平成9年7月17日(大阪地方裁判所 平成6年(ワ)1130号・平成5年(ワ)12306号)】

【要旨】
 専用コントローラーがゲーム機に適合することを示す用途表示としての態様に該当する場合は商標的使用に該当しないとしつつも,被告による使用態様が用途表示とはいえないとの判断がされた。

【キーワード】
用途表示,商標的使用態様

【判旨】

 右表示中の「NEO」は,「NEO・GEO」を意味するものであるところ(証人橋口貞男),被告製品が本件ゲーム機本体を対象機種とするものであることからすれば,本件ゲーム機本体に適合するものであることを示す用途表示としての態様で「NEO・GEO」の表示を使用することは許されると解する余地があるとしても,被告による「ファイティングスティックNEO(Fighting Stick NEO)」及び「ファイティングスティックNEOII(Fighting Stick NEOII)」という表示の使用態様は,前記の別紙商品表示目録(一)ないし(四)記載のとおりであり,その使用態様に照らせば,到底用途表示ということはできず,「NEO」という部分を含めた全体が一体として被告製品の商品主体を表示する機能を有するものといわなければならない。

【検討】

 NEO・GEO事件・第一審では,専用コントローラーがゲーム機に適合することを示す用途表示としての態様に該当する場合は商標的使用に該当しないとしつつも,被告による使用態様が用途表示とはいえないとの判断がされた。控訴審(大阪高判平成10年12月21日知財集30・4・981)もかかる判断を維持している。

 同じく用途表示に関する裁判例として,東京地判平成16.6.23判時1872号109頁〔ブラザー事件・第一審〕では,機器類と消耗品との適合関係が限定される場合に,商品の外箱等に適合機種を表示することが通常行われていることや,消費者保護のために適合機種を表示することが不可欠であることを理由に,用途表示であることが肯定されている。また,①「For」や「用」の表示から消耗品の用途と理解できたこと,②「対応表」や「取付け方法」の表示があったこと,③消耗品の製造者又は販売者を示すものと認識し得る表示があったことといった各表示に基づく使用態様を理由に,用途表示であることが肯定されている。
なお,ブラザー事件・第一審の控訴審(東京高判平成17.1.13平成16(ネ)3751)もかかる判断を維持している。

 このように,NEO・GEO事件・第一審及びブラザー事件・第一審は,いずれも,何らかの用途を表示するものであれば,一律に用途表示であるとして商標的使用態様に該当しないとはしておらず,適合関係を示すものでなければ用途表示に該当せず,また,用途表示に該当するかどうかを使用態様に基づいて判断している点で共通している。

 これらの裁判例は,用途表示に関する商標的使用態様の考え方について,実務上,参考になるものと考えられる。

(文責)弁護士・弁理士 杉尾雄一