【平成23年6月30日(大阪地裁 平成22年(ワ)第4461号)】

【概要】
ドメイン名の一部が、商標として使用されていると認められた事例。

【キーワード】
ドメイン、商標的使用

第1 判旨

3  争点3(被告標章4は商標として使用されているか)について
(1)  被告は,被告標章4は,ホームページアドレスを表示したものであり,商標として使用されているものではないと主張するので,以下検討する。
(2)  ドメイン名自体の広告的機能
  被告標章4は,被告のホームページアドレスそのものではないものの,ホームページアドレスを構成するドメイン名(mon-chouchou.com)の一部である(甲10)。
  しかしながら,上記ドメイン名は,被告商品の保冷バッグ(甲9)や包装用紙袋(甲132)に表記されているほか,被告のテーマカラーであるオレンジとブラウンで(乙168),被告商品の包装箱風に着色されたトラックの車体広告に,被告自身が商標的使用であること(役務標章であること)を認めている被告標章1と共に記載されており(甲32),被告商品ないし被告の営む洋菓子販売業に係る広告的機能を発揮しているといえる
(3)  出所識別標識としての重畳的使用
 被告は,被告標章4を,被告の略称であると主張している。
 そして,社名を冠したドメイン名を使用して,ウェブサイト上で,商品の販売や役務の提供について,需要者たる閲覧者に対して広告等による情報を提供し,あるいは注文を受け付けている場合,当該ドメイン名は,当該ウェブサイトにおいて表示されている商品や役務の出所を識別する機能を有しており,商標として使用されているといえるところ,被告は,ウェブサイト上で,被告商品の情報を提供し,注文を受け付けている(甲10,35,44)。
 そうすると,被告のドメイン名は,単にホームページアドレスの一部として使用されているものではなく,出所識別標識としても使用されているといえる。
(4)  出所識別標識としての使用
 被告標章4と同じ,「mon」と「chouchou」の間に「-」を記載した態様は,被告店舗15の店舗名表記にも使用されている(甲114)。
(5)  以上のことからすれば,被告標章4は,商標として使用されていると認められる。

第2 検討

 ドメイン名の使用が商標的使用態様に該当するかどうかについて、リーディングケースとなる東京地判平成13年4月24日〔J-PHONE事件〕では、商標的使用態様に該当するには、ドメイン名の使用態様が、①ドメイン名に使用しているのみの場合、あるいは、②ドメイン名に使用し、ウェブサイトで商品・サービスを提供している場合だけでは不十分で、「当該固有名詞の主体がドメイン名の登録者であると考える」事情として、「ドメイン名が特定の固有名詞と同一の文字列である場合など」、例えば、③ドメイン名に使用し、ウェブサイトで商品・サービスを提供し、ドメイン名を商品・サービスに使用していることが必要であることを判旨しているものと解釈されます。現に、J-PHONE事件では、ウェブページ上で、ドメイン名の一部である「J‐PHONE」が使用されていること、ドメイン名「j-phone.co.jp」とウェブページ上の表示「J‐PHONE」の関連性の大きく2つの事情から、ドメイン名の商標的使用態様性を肯定しています。
 本件でも同様に、ドメイン名が、保冷バッグや包装用紙袋等に付されていることを理由に広告的機能を発揮している事情を重視して、ドメイン名の商標的使用態様性を肯定していますので、本件の判断は、J-PHONE事件の判断と整合しているものと考えられます。

以上
弁護士・弁理士 杉尾雄一