侵害品が外国製品であり,個人輸入や小さな輸入代理店により,少しずつ,無数の輸入がなされるような場合には,一度日本国内に輸入されてしまうと,個々に侵害を問うことが事実上不可能になってしまいます。

このような場合には,関税定率法による輸入差止手続き(いわゆる「水際取締り」,「水際措置」)により,侵害品の輸入を差止めることができます。 水際取締りがうまくできれば,国内での侵害排除措置を行う必要がなくなるので,有効な手段と言えます。

輸入差止手続きは,税関が自主的に行う場合と,権利者の申し立てに基づいて行う場合の2通りがあります。後者の場合には,特許権者は,自己の権利を侵害すると認める貨物が輸入されようとする場合に,税関長に対し,当該貨物の輸入を差止め,認定手続きを執るべきことを申し立てることになります(関税法69条の13)。

申立ての要件は

  1. 権利者であること
  2. 権利の内容に根拠があること
  3. 侵害の事実があること
  4. 侵害の事実を疎明できること
  5. 税関で識別できること

です。

このうち,特許の場合に最も問題となるのが,5の要件です。 5の要件に関連して,見本検査制度が設けられています。 すなわち,税関では外観で識別できず,権利者自ら検査をしないと自己の主張を裏付ける証拠・意見を提出することができない場合には,いくつかの条件を具備すれば,税関が権利者に疑義貨物の見本を提供し,権利者による分解(分析)検査ができます(関税法69条の16)。

輸入差止めの申立てが受理されると,当該貨物が侵害物品であるか否かについて,認定手続きにより判断することとなります。認定手続きでは,輸入者の関与のもとで,専門委員への意見照会や特許庁長官に対する意見照会を利用して,当該貨物が侵害物品かどうかを判断していくことになります。

水際取締りについては,以下のリンク先が参考になります。

<税関による知的財産侵害物品の取締り> http://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/index.htm

<『知財管理』Vol.56No.82006特許権に基づく関税定率法等の水際措置について> http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/koukai/2006_08_1149.pdf

USLFでは,税関による知的財産侵害物品の取締り手続きの経験も多数有しており,事案に対して最適な特許紛争に関する戦略戦術を立案します。お気軽にご相談ください。