御社の特許が侵害されているかを確認するためには,具体的には,以下の手順を踏む必要があります。
1.特許権の存在の確認
特許庁から入手した最新の特許原簿で,御社の特許権が存在しているかを確認します。特許料の納付を忘れていて特許権が消滅していたり,すでに他社に特許権を譲渡していたりすることがあります。
コラム:ありうる失敗例 当社からX社に対して特許侵害の警告状を送った後に,登録原簿を確認したら,本件特許は当社とA社とで合弁設立したB社と共有だった。 当社がこれまで弁理士との応対を含めた権利化,年金納付全てを行っていた上,合弁会社設立の際に持分譲渡したことを社内データベースに反映し忘れていたのだ。 本来,警告を出すためにはB社のみならず,合弁相手であるA社の確認も必要なはずである。事業部に事情を話してA社に経緯を説明してもらい,何とか事後承諾という形で収めたが,知財部は事業部から大目玉・・・
2.クレームの確認
つぎに,特許公報で「特許請求の範囲」(「クレーム」といいます。)を確認する必要があります。 特許公報には特許番号(特許第○○○○○○○号)が記載されていますので,特許原簿に記載されていた特許番号が記載されているかを確認してください。
クレームに記載されている範囲が,その特許の,いわば権利範囲になります。クレームに記載されている内容に当てはまる製品について,その特許に基づいて差止めや損害賠償を請求できるのです。 また,訂正審判,訂正請求をしている場合もあり得ますので,必ず,現在権利化となっているクレームでを確認するようにしてください。
3.対象製品・対象行為の特定
侵害していると思われる対象製品・対象行為を特定します。
特許発明が物の発明である場合は,特許権の効力が物の生産,使用,譲渡等(譲渡,貸渡し),輸出,輸入,譲渡等の申出に及びます(特68条,2条3項1号)。この場合,譲渡された製品が特許権の権利範囲に及んでいれば,特許権の侵害ということになりますから,市場から又は特定のルートから対象製品を入手し,この対象製品がクレームを侵害しているかを検討します。
特許発明が物を生産する方法の発明である場合も,特許権の効力がその方法により生産した物の使用等に及びますので(特2条3項3号),同様に市場から対象製品を入手して分析することが必要です。
特許発明が物を生産する方法の発明に該当しない方法の発明(いわゆる「単純方法の発明」)である場合は,特許権の効力が方法の使用にしか及びませんので(特2条3項2号),侵害していると思われる第三者が行っている行為を特定して,この行為がクレームを侵害しているかを検討します。
コラム:難しい中間製品クレーム-侵害品入手の難しさ 侵害製品の入手はいつでも簡単とは限りません。 例えば,中間製品のように工場内で生産され出荷されるときは別の形になっている物や,機械設備のように専らBtoBで取引きされ一般市場に出回らない物の入手や侵害特定は非常に困難です。
また,裁判で侵害物件として挙げる際に,入手経路が問われることもあります。 入手経路が主張立証できない場合は,訴訟手続きに乗せることは難しいのです。 例えば,下請け会社の協力で同業他社の侵害製品を入手した場合など,下請け会社がこれを裁判手続にかけることを拒むかもしれません。 侵害品入手には,常に,裁判という公の手続きに入手経路を提出できるかどうかの配慮が必要です。
4.クレームを侵害しているか
3.で特定した対象製品・対象行為が,2.で確認したクレームの文言に該当すれば,原則として,特許権の侵害になります。 詳しくは,【実施例とそっくり!やばいのかな?】
USLFでは,紛争を円満に解決する場合のみならず,訴訟という決断をした場合でも,社内コンセンサスやデュープロセスを加味して,手続を進めます。お気軽にご相談ください。