【東京地裁平成27年7月16日・平成25年(ワ)第28365号】

【キーワード】不正競争防止法2条1項3号,服,形態模倣,実質的同一性,依拠性


第1 事案の概要
 「本件は,原告が,別紙被告商品目録記載3~11の各商品(以下,それぞれを同目録の番号により「被告商品3」などといい,これらを「被告各商品」と総称する。)を販売した被告に対し,被告各商品は原告の販売する別紙原告商品目録記載3~11の各商品(以下,それぞれを同目録の番号により「原告商品3」などといい,これらを「原告各商品」と総称する。)の形態を模倣した商品であり(各目録の同一番号の商品がそれぞれ対応する。以下,対応する原告各商品と被告各商品を併せて「商品3」などということがある。),その販売は不正競争防止法(以下「法」という。)2条1項3号所定の不正競争行為に当たると主張して,法4条に基づく損害賠償金1378万4266円(法5条1項による損害1247万2060円,弁護士・弁理士費用131万2206円)」等「を求めた事案である。なお,別紙被告商品目録記載1及び2の各商品に係る請求はいずれも取り下げられた。」
本件では,①原告の請求主体性,②原告各商品と被告各商品の実質的同一性,③依拠性,④被告の故意又は重過失等の点が争点となっているが,本稿では②原告各商品と被告各商品の実質的同一性,及び③依拠性のみを取り上げる。

第2 判旨(下線は筆者による)
1 実質的同一性について
「原告は,原告各商品及び被告各商品の形態は別紙対比表のとおりであり,下線を付した部分を除き両者の形態は同一である旨主張する。
そこで判断するに,証拠(甲3,44)及び弁論の全趣旨によれば,原告各商品及び被告各商品の形態は,上記の下線部分のほか,商品5~10のギャザー加工の有無,商品11の袖部の広がりの有無において相違するものの,その余の基本的形態及び具体的形態はいずれも同一であると認められる。また,原告各商品と被告各商品は生地,糸等の色にも相違がみられるが,被告はこの点について特段の主張をしておらず,実際,これらは単に色違いであるとの印象を与えるにとどまり,これにより異なる形態であると認識させるものでないと解される。
 そして,原告各商品及び被告各商品の形態の要点は以下の(1)~(9)の各ア記載のとおりであるところ,同イにおいて詳述するとおり,基本的形態は同一(商品9以外)又はほぼ同じ(商品9)であり,具体的形態も若干の相違点を除けば同一である上,形態中の特徴的な部分はいずれも共通するということができる。また,上記の相違する部分は,以下のとおり,一見しただけでは識別できず,若しくは全体的な形態に与える影響が乏しいもの,原告各商品に比し手間若しくは費用を掛けない方向へ変更したもの,又は婦人服という商品の性質上極めて容易に変更できるものである。そうすると,原告各商品と被告各商品の形態はいずれも実質的に同一であると評価することが相当である。」

被告商品3

最高裁判所HPより引用

「(1)商品3
ア 基本的形態は,いずれも台襟付きシャツカラー,長袖セットインスリーブ,前ボタン開きのブラウスであり,具体的形態は,次の各点以外,同一である。
 両者が相違するのは,〔1〕原告商品3のボタンが貝ボタンであるのに対し,被告商品3のボタンはラクトボタンであること,〔2〕原告商品3で施されているジグザグステッチが被告商品3では施されていないこと,〔3〕襟幅が,原告商品3においては背面から正面にかけて緩やかに広がる形態であるのに対し,被告商品3においてはほぼ均一であることの3点である。
 なお,被告は,身頃左側のピンタックが水平か否かも相違する旨主張するが,本件の証拠上,両者が相違するとは認められない。
イ 上記アのとおり,商品3は基本的構成が一致し、具体的構成もほぼ同一である。特に,原告商品3の形態上の特徴は,身頃の前立て部分を除き全体に多数のピンタックが施され,身頃の上下,左右でピンタックの方向が異なるほか,それぞれのピンタックは3列を1パターンとして各パターン間に広めの余白部分があることにより複雑な縞模様が形成されていることにあるが,被告商品3はこの点も同一であると認められる(甲3,別紙被告商品目録3参照)。
 一方,上記相違点のうち〔1〕は,ボタンの素材の差にすぎず(貝の方が高価であると解される。),外観上その違いはさほど目立つものではないし,〔2〕は,布と同色の糸でジグザグステッチが施されているため,注意深く観察しなければ分からない差異であり,〔3〕は,襟幅の違いは小さく,着用時にはほとんど目立たなくなるものであって,結局,これらの点は,いずれも需要者に与える印象に格別の影響を与えるものでないと考えられる。」

被告商品4

「(2)商品4
ア 基本的形態は,いずれも4枚襟,フレアースリーブのチュニックであり,具体的形態は,次の各点以外,同一である。
 両者が相違するのは,〔1〕原告商品4の身頃はその胸部から下端にかけてアシンメトリーに緩やかに広がっているのに対し,被告商品4の身頃はシンメトリーに緩やかに広がっていること,〔2〕刺繍部分のうち花のモチーフが原告商品4においては左胸に二つ,右胸に三つ,縦に付されているのに対し,被告商品4においては左胸に三つ,右胸に三つ,三角形状に付されていること,〔3〕原告商品4のボタンは貝ボタンであるのに対し,被告商品4のボタンはプラスチックボタンであり,その中心部にレプリカのダイヤモンドが付されていることの3点である。
 なお,被告は,原告商品4には背面にベルトひもが配置されている旨主張するが,原告商品4にベルトひもはないと認められる(甲3,44)。
イ 上記アのとおり,商品4は基本的構成が一致し,具体的構成もほぼ同一である。特に,原告商品4の形態上の特徴は,裾が緩やかに広がるチュニックで,複数の花と葉のモチーフで構成される大きな刺繍が,前身頃上部(左右の身頃をまたぐ。),右前身頃中央,右後身頃中央,左袖上部及び右袖下部にそれぞれ施されていることにあるが,被告商品4はこの点も同一であると認められる(甲3,別紙被告商品目録4参照)。
 一方,上記相違点のうち〔1〕は,全体観察によってもほとんど分からない程度の差異であり,〔2〕も,一体となった複雑な刺繍の一部であり,気付くことが困難なものである。また,〔3〕は,素材の差にすぎず,外観上その違いはさほど目立つものではない。したがって,これらの相違点は,いずれも需要者の受ける印象にさしたる影響を与えないということができる。」

被告商品5

最高裁判所HPより引用

「(3)商品5
ア 基本的形態は,いずれもマチ付きスタンドカラー,七分丈セットインスリーブ,前ボタン開きのブラウスであり,具体的形態は,次の各点以外,同一である。
 両者が相違するのは,〔1〕原告商品5においては生地に収縮加工又はギャザー加工が施されているのに対し,被告商品5の生地にはそのような加工がされていないこと,〔2〕両商品のポケット口の斜めのピンタックの方向が逆であることの2点である。
イ 上記アのとおり,商品5は基本的構成が一致し,具体的構成もほぼ同一である。特に,原告商品5の形態上の特徴は,端にフリルの付いたスタンドカラー,胴部全体に施された垂直の多数のピンタック,緩やかに広がった袖口にフリルがついており,左右各3個のボタンが緩やかなカーブを成すパーツに沿って付いていることにあるが,被告商品5はこの点も同一であると認められる(甲3,別紙被告商品目録5参照)。
 一方,上記相違点のうち〔1〕は外観上格別の差異を生じさせるものでなく,〔2〕は需要者の受ける印象にさしたる影響を与えないささいな差異であるということができる。」

被告商品6

最高裁判所HPより引用

「(4)商品6
ア 基本的形態は,いずれも台襟付きシャツカラー,長袖セットインスリーブ,前ボタン開き比翼仕立てのブラウスであり,具体的形態は,次の各点以外,同一である。
 両者が相違するのは,〔1〕原告商品6のボタンが貝ボタンであるのに対し,被告商品6のボタンはラクトボタンであること,〔2〕原告商品6においては生地に収縮加工又はギャザー加工が施されているのに対し,被告商品6の生地にはそのような加工がされていないこと,〔3〕両商品はいずれも左身頃に箱ポケットが設けられているところ,原告商品6は縦に三つ並んでいるのに対し,被告商品6ではそのうち中央のポケットがないことの3点である。
イ 上記アのとおり,商品6は基本的構成が一致し,具体的構成もほぼ同一である。特に,原告商品6の形態上の特徴は,前左身頃と後右身頃をバイアスに裁断された生地を使用して斜めに複数のピンタックを等間隔に施す一方,前右身頃と後左身頃には水平に複数のピンタックを等間隔に施していることにあるが,被告商品6はこの点も同一であると認められる(甲3,別紙被告商品目録6参照)。
 一方,上記相違点のうち〔1〕は,素材の差にすぎない上,最上部のボタン以外は着用時には見えない構造となっている。〔2〕は外観上特段の差異を生じさせるものでない。〔3〕は,生地と同系色のポケットであって目立つものでない上,これを取り外して製作の手間を省くことは極めて容易と考えられる。したがって,これらの相違点は,需要者の受ける印象にさしたる影響を与えないささいな差異であり,又は印象を多少変えるとしても極めて容易な改変ということができる。」

被告商品7

最高裁判所HPより引用

「(5)商品7
ア 基本的形態は,いずれも台襟続きシャツカラー,長袖セットインスリーブ,前ボタン開きのブラウスであり,具体的形態は,次の各点以外,同一である。
 両者が相違するのは,〔1〕原告商品7のボタンが貝ボタンであるのに対し,被告商品7のボタンはラクトボタンであること,〔2〕原告商品7においては生地に収縮加工又はギャザー加工が施されているのに対し,被告商品7の生地にはそのような加工がされていないことの2点である。
イ 上記アのとおり,商品7は基本的構成が一致し,具体的構成もほぼ同一である。特に,原告商品7の形態上の特徴は,前身頃後身頃共に,裾部分を除き全般に肩線から裾にかけて段階的に間隔が広がるように斜めのピンタックが施されていることにあるが,被告商品7はこの点も同一であると認められる(甲3,別紙被告商品目録7参照)。
 一方,上記相違点のうち〔1〕はボタンの素材の差にすぎず,〔2〕は外観上ごく僅かな差異しか生じさせないものであって,いずれも需要者の受ける印象にさして影響を与えない差異であると考えられる。」

被告商品8

最高裁判所HPより引用

「(6)商品8
ア 基本的形態は,いずれもスタンドカラー,七分丈セットインスリーブ,前ボタン開きのブラウスであり,具体的形態は,次の各点以外,同一である。
 両者が相違するのは,〔1〕ボタンホールに共布テープを通した飾り部分が,原告商品8においては身頃に4か所,袖部に3か所形成されているのに対し,被告商品8ではそれぞれ2か所,1か所であること,〔2〕原告商品8のピンタックにはギャザー加工が施されフリルのように波打っているのに対し,被告商品8ではギャザー加工がなく波打っていないこと,〔3〕前身頃のボタンの数が原告商品8では4個であるのに対し,被告商品8では3個であることの3点である。
 なお,被告は,原告商品8の袖部にはピンタックを施した箇所と施していない箇所が一定の間隔で設けられ,ピンタックによる細い縞模様とピンタックがないことによる太い縞模様が合わせて形成されているのに対し,被告商品8の袖部は全体にわたりピンタックが施されている旨主張するが,そのような相違があるとしても,本件の証拠上は看取することができない程度のものである(甲3参照)。
イ 上記アのとおり,商品8は基本的構成が一致し,具体的構成もほぼ同一である。特に,原告商品8の形態上の特徴は,左右の襟が前で大きく重なり,その中心をボタンで留めていることにあるが,被告商品8はこの点も同一であると認められる(甲3,別紙被告商品目録8参照)。
 一方,上記相違点のうち〔1〕は,飾り部分があること(身頃につき,全般に幅の広いピンタックと狭いピンタック,生地に空けた複数のボタンホールに共布テープを通した飾り部分が交互に施され縞模様をなしていること,袖部にも,水平に複数のピンタックと身頃の生地に空けた複数のボタンホールに共布テープを通した飾り部分が交互に施されていること)自体が原告商品8の特徴であり,被告商品8がこの点で共通することや,当該飾りが洋服本体と同じ色であること,飾りの上下に平行してピンタックが形成されていることに照らすと,注意深く観察しなければ分からない差異にとどまるということができる。また,〔2〕は,外観の印象上ごく僅かな差異しか生じさせておらず,〔3〕は,多少の違いはもたらすとしても,ボタンの数を減らして製作の手間を省くことは極めて容易である。そうすると,以上の各相違点は,いずれも形態の実質的同一性の判断に影響を与えないものということができる。」

被告商品9

最高裁判所HPより引用

「(7)商品9
ア 基本的形態は,いずれも台襟続きブラウスカラー,セットインスリーブ,前ボタン開きのボレロであることは共通しているが,原告商品9が半袖であるのに対し,被告商品9は七分袖である点で相違する。具体的形態は,原告商品9のピンタックは生地にギャザー加工がされているのに対し,被告商品9においてはギャザー加工がされていない点が相違する以外,同一である。
イ 上記アのとおり,商品9は基本的構成,具体的構成ともほぼ同一である。特に,原告商品9の形態上の特徴は,身頃の裾部分を除き全体に細かいピンタックが水平に等間隔で施されていることにあるが,被告商品9はこの点も同一であると認められる(甲3,別紙被告商品目録9参照)。
 一方,基本的構成に係る上記相違点は,婦人服という商品の性質上,半袖を七分袖にすることは極めて容易であり,その余の共通点に比較すると,形態の実質的同一性を失わせるものではないまた,具体的構成に係る上記相違点は,外観上の印象にほとんど影響を与えないと考えられる。」

被告商品10

最高裁判所HPより引用

「(8)商品10
ア 基本的形態は,いずれもワイドスタンドカラー,長袖パフスリーブのブラウスであり,具体的形態は,次の各点以外,同一である。
 両者が相違するのは,〔1〕原告商品10に施されたギャザー加工が細かく繊細な縮れ加工であるのに対し,被告商品10のギャザー加工が粗く大きな縮れ加工であること,〔2〕原告商品10の襟部のピンタックにはギャザー加工が施されているのに対し,被告商品10の襟部にはそのような加工が施されていないことの2点である。
イ 上記アのとおり,商品10は基本的構成が一致し,具体的構成もギャザー加工の有無,精粗を除き同一である。そして,この相違点についてみても,〔1〕についてはギャザー加工が施されて生地全体が波打っている点は共通しており,形態の実質的同一性を失わせることはないというべきであり,〔2〕も外観上の印象にほとんど影響を与えないものといえる。」

被告商品11

最高裁判所HPより引用

「(9)商品11
ア 基本的形態は,いずれも上襟とドレープラペルによるテーラード風カラー,長袖セットインスリーブ,ハーフ丈のブラウスであり,具体的形態は,次の各点以外,同一である。
 両者が相違するのは,〔1〕原告商品11のボタンが貝ボタンであるのに対し,被告商品11のボタンはラクトボタンであること,〔2〕原告商品11の袖部がフレア状に広がっているのに対し,被告商品11の袖部はフレア状に広がっていないことの2点である。
 被告は,原告商品11の身頃裾部は被告商品11の身頃裾部より幅が広い旨主張するが,本件の証拠上,そのような差異は認められない。
イ 上記アのとおり,商品11は基本的構成が一致し,具体的構成もほぼ同一である。特に,原告商品11の形態上の特徴は,襟部から腹部にかけて大きなラペルが形成され,首部がV字に大きく開襟していること,身頃が緩やかで大きなAラインの形状をしていること,全般に多数の細かいピンタックが等間隔に施されていることにあるが,被告商品11はこの点も同一であると認められる(甲3,別紙被告商品目録11参照)。
 一方,上記相違点のうち〔1〕はボタンの素材の差にすぎないし,〔2〕の原告商品11のフレアもさほど目立つものでなく,いずれも需要者の受ける印象に格別の影響を与えるものではいと解される。」

2 依拠性
「(1)被告各商品と原告各商品の形態が実質的に同一であること,相違点の一部は原告各商品に比し被告各商品において手間又は費用が掛けられていないものであることは前記2のとおりであり,これらは被告各商品の形態が原告各商品に依拠したものであることを推認させる事情ということができる。
 これに加え,証拠(甲4,15,98,99,102,乙48~53,64~72)及び弁論の全趣旨によれば,被告は原告から原告各商品(原告商品4を除く。)を購入していること,その購入日並びに原告各商品及び被告各商品の販売開始日は以下のとおりであることが認められる。」

 
「(2)上記事実関係によれば,被告は,商品4を除き,原告各商品を購入し,その後に対応する被告各商品の販売を開始したことが明らかである。また,原告商品4については,原告が被告に販売したとの記録は原告に残されていないが,他の商品と同様に,被告はこれを入手した後に被告商品4の販売を開始したと推認することが可能である。
 以上の事情に照らすと,被告各商品の形態は原告各商品に依拠したものであると認めるのが相当である。
(3)これに対し,被告は,被告各商品はいずれも対応する原告各商品の販売開始前に,中国の会社からカタログ(乙1~3)を見せられるなどして発注することを決め,縫製仕様及び注意書(乙6~14)を作成して交付するなど,被告各商品の製作準備を行っていた,被告が原告各商品を購入したのは縫製の参考にするためであり,形態に依拠したものでない旨主張する。
 そこで判断するに、まず,被告が指摘するカタログの証拠価値については前記1(3)のとおりである。また,上記縫製仕様及び注意書は,これに記載された作成日が正しいとすると実際の商品販売開始日までに1年以上を要したものが多数に上ることになるが(被告商品4,6~8,11。被告商品6及び7は2年以上要している。),婦人服という被告各商品の性質上,販売開始までこれほど長時間を要する場合が多いとは考え難い。さらに,縫製の参考にするために原告各商品を多品種購入したとするのは不可解というほかない。したがって,被告の上記主張は採用できない。」

第3 検討

 本件は,9点の婦人服について,被告商品が原告商品の形態を模倣したものであると認められた事例である。
 まず,実質的同一性の判断において,特徴的部分が共通していることを指摘している点が注目される。かかる判断方法は,要部の共通性を重視する意匠権の類否判断に近しいようにも思われる。もっとも,本件では特徴的部分以外の基本的形態及び具体的形態においてほとんど共通する事案であったように思われるため,実質的同一性の判断において,特徴的部分の共通性を強調する判断方法を一般化することはできないものと考える。
 また,実質的同一性判断において,まず①需要者の受ける印象を検討しつつ,②印象が多少異なっていたとしても,極めて容易な改変である場合には実質的同一性を肯定するとの判断をなしている点も注目される。実質的同一性について,需要者及び改変者のいずれの視点で判断するべきであるのかについては見解が分かれているところ 1,本判決は(補完的に)改変者の視点をも採用している点で参考になる。
 さらに,実質的同一性の具体的判断においては,布と同色の糸でのステッチや,ポケットの個数といった必ずしも需要者が強く着目しない形態の差異について,実質的同一性判断において重視しないとの判断をなしており,実務における具体的判断において参考になるといえるだろう。
 最後に,本件では,被告が原告商品を購入し,その後に被告商品を販売しているといった事実が認定されているため,依拠性は優に認定できる事案であったといえる。かかる立証方法は,実務上参考になるものと思われる。

以上

(文責)弁護士 山本真祐子


1 田村善之「商品形態のデッド・コピー規制の動向 ―制度趣旨からみた法改正と裁判例の評価―」(2009年・知的財産法政策学研究25号),蘭々「商品形態の実質的同一性判断における評価基準の構築 ―近時の裁判例を素材として―」(2009年・知的財産法政策学研究25号),髙部眞基子編『著作権・商標・不正競争関係訴訟の実務』(2015年・商事法務)416~417頁等