平成27年11月26日判決言渡
平成26年(行ケ)第10234号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成27年10月15日
【キーワード】
商標法50条、2条3項2号、不使用取消審判、出所表示機能
商標法50条所定の「使用」は、当該商標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用されていれば足り、出所表示機能を果たす態様に限定されるものではないとして、審決の結論を維持した事例である。
【特許庁における手続の経緯】
S37.12.21 | 指定商品を第11類「電球類及照明器具」として、「アイライト」の片仮名を横書きして成る商標(以下「本件商標」という。)につき、設定登録 商標登録第0602699号 |
H26.1.30
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原告、本件商標に対し不使用取消審判請求 取消2014-300062 |
H26.9.24 | 請求棄却審決 |
【審決の理由の要点】
被告が,平成23年10月12日付けで,本件商標が付された個装箱で包装したメタルハライドランプ水中灯を納品した行為(以下「本件行為」という。)を認定し,同行為をもって,本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間」という。)に日本国内において,商標権者である被告が上記請求に係る指定商品について,本件商標と社会通念上同一ということのできる商標を使用していたことを証明したものと認められるから,本件商標の登録は,商標法50条の規定により取り消すことはできない,というものである。
【争点】
商標法50条所定の「使用」は、出所表示機能を果たす態様で使用されていなければならないか
【判旨抜粋】
商標法50条の主な趣旨は,登録された商標には,その使用の有無にかかわらず,排他独占的な権利が発生することから,長期間にわたり全く使用されていない登録商標を存続させることは,当該商標に係る権利者以外の者の商標選択の余地を狭め,国民一般の利益を不当に侵害するという弊害を招くおそれがあるので,一定期間使用されていない登録商標の商標登録を取り消すことについて審判を請求することができるというものである。
上記趣旨に鑑みれば,商標法50条所定の「使用」は,当該商標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用されていれば足り,出所表示機能を果たす態様に限定されるものではないというべきである。 本件行為当時,メタルハライドランプ水中灯につき,「アイライト」が出所表示機能を果たしていなかったということはできず,原告の前記主張は,採用できない。
【解説】
1.本判決の要点
本判決は、商標法50条の「使用」の意義に関し、当該商標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用されていれば足り,出所表示機能を果たす態様に限定されるものではないとした。結論としては、本件商標の使用行為は、2条3項2号所定の「商品の包装に標章を付したものを譲渡」する行為であるから、50条の「使用」の事実が認められ、さらに、出所表示機能を果たしていなかったということはできないとして、原告の請求を棄却した。
2.考察
(1) 商標法における「使用」の概念
本判決は、商標法50条の「使用」の意義について、出所表示機能を果たす態様に限定されるものではない
と判示した点で興味深い。「使用」については、2条3項各号で定義されている。そして、条文に明記はない
が、「商標としての使用(商標的使用)」という概念があり、商標としての使用でなければ商標権の侵害には
当たらない。商標としての使用とは、自他商品識別機能ないし出所表示機能を有する態様で使用する行為
である。
(2)商標としての使用
商標としての使用が争われた事例としては、ポパイ事件がある。「被服」に関して「POPEYE」という商標権
を保有する商標権者が、アンダーシャツの胸部分の中央に「POPEYE」の文字とともにポパイの絵を描いて
販売していた業者を商標権侵害で訴えたという事案である。業者は「POPEYE」という商標を、「被服」である
アンダーシャツに使用しているので、商品と結びついて使用しており、一見商標権を侵害するようにも思えた
が、裁判所は商標権侵害ではないと判断した。なぜなら、アンダーシャツの胸部分の中央に大きく「POPEY
E」と表記することは、単にデザイン的に使用しているだけで、出所表示機能を発揮する態様で使用している
わけではないからである。
このように、商品と結びついて商標を使用しているように思えても、出所表示機能を発揮する態様で使用され
ているのでなければ、商標権の侵害とはならない。
(3) 商標法50条の「使用」
上記のように、侵害局面では、商標としての使用であることが要件となるが、本判決では、侵害局面での「使
用」とは異なり、商標法50条の「使用」は、出所表示機能を果たす態様に限定されるものではなく、2条3項各
号所定の使用であれば足りるとしている。商標法50条所定の「使用」に該当するかが争われた事例として
は、青星事件(最判昭43.2.9)がある。この事案では、指定商品「ソース」の商標権にかかる登録商標の使
用事実が、株主総会開催通知に登録商標が表示されているという事実のみであった場合、商標法50条の
「使用」に該当するかが争われた。この事案において最高裁は、登録商標が指定商品との具体的関係におい
て使用されていなければ、商標法50条の「使用」とはいえないとしている。
本件の知財高裁の考え方からすると、ポパイ事件のような態様であっても、指定商品「被服」と結びついて
「ポパイ」を使用していれば、それが出所表示機能を果たす態様での使用ではなくとも、商標法50条の「使
用」に該当することになる。商標法50条の趣旨は、使用しない登録商標には業務上の信用が化体せず、
保護価値がないためであることからすれば、侵害局面の「使用」とは異なる解釈を示した知財高裁は妥当
であると考える。
ただし、不使用取消を免れるためだけの名目的な広告的使用(2条3項8号)であった場合、商標法50条
の「使用」には該当しないと判断される可能性もあるので、形式的に広告的使用をすればよいものではない
ことに注意されたい。