【知財高裁令和1年10月10日判決(平成30年(ネ)10064号/平成31年(ネ)10025号】

【ポイント】
他人の企業名をウェブページのメタタグに使用した行為が不正競争行為として違法とされた事例

【キーワード】
メタタグ,不正競争防止法2条1項1号

事案1

 本件は、浄水器等製造販売等をする一審原告が、楽天市場に設けられたネットショップにおいて、一審被告らが、一審原告の著名又は周知な商品等表示である本件カタカナ表示(タカギ)と類似する被告標章を使用して家庭用浄水器の交換用ろ過カートリッジ(被告商品)を販売していると主張して、一審被告に対し、上記各標章の使用の差止め、損害賠償金の支払等を求めた事案である。

知財高裁の判断

 知財高裁は、「前提事実(4)アのとおり、一審被告グレイスランドが、平成28年11月15日から平成29年3月22日までの間、被告ウェブページ1~4のタイトルタグ及びメタタグに原判決別紙1-1のタイトルタグ欄及びメタタグ欄のとおり記載していたこと、その結果、〈1〉グーグルや楽天市場でキーワード検索した場合に、検索結果を表示する画面にタイトルとして被告標章1又は2が表示され、空白部分を挟んで「取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ」として商品の種類が表示され、〈2〉楽天市場では、タイトルの横に被告商品の画像が表示され、さらに、〈3〉グーグルでは、場合によって、タイトルの下に被告標章2を含む「タカギ 取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ 浄水カートリッジ(標準タイプ)※当製品はメーカー純正品ではございません。ご確認の上、お買い求めください。」などの表示がされていたことが認められる。上記のような態様で被告標章1及び2を使用した場合、需要者は、独立して表示された被告標章1及び2及びその後に空白を挟んで表示されている語句(「取付互換性のある交換用カートリッジ」、「浄水器カートリッジ」、「浄水カートリッジ」)や被告標章1及び2の近くにある被告商品の写真から、被告標章1及び2が被告商品の出所を示していると認識するといえる。そして、このような表示は、タイトルタグやメタタグの記載によって実現されているものであるから、タイトルタグやメタタグに被告標章1及び2を記載することは、被告標章1及び2を、商品を表示する商品等表示として使用(不競法2条1項1号)するものと認められる。」と判示し、その他の要件も具備するとして、不正競争行為の該当性を肯定した。

検討

 「メタタグ」とは、HTMLファイルに記載するコードであり、検索エンジンに対してウェブページの概要や関連するキーワードを伝達する役割を持つものである。このメタタグに、他人の商標を記載した場合には、商標権侵害を構成するという裁判例は従前も存在した(大阪地裁平成17年12月8日判決(平成16年(ワ)第12032号[クルマの110番(メタタグ)事件)。本件は、メタタグ記載行為が、出願・登録が必要な商標権侵害ではなく、出願も登録も不要な不正競争防止法違反により、違法とされた点に特徴を有する。
 メタタグへの記載行為を行われた企業としては、商標出願を行っていなかったとしても、周知性、類似性、混同のおそれといった他要件は必要となるものの、不正競争防止法による保護を受けられる可能性が本件により示された点は、実務上も有益な視点となろう。

以上
(文責)弁護士・弁理士 高橋正憲


1 本件は、他にも争点があるが、紙面の都合上一部分のみ紹介する。