【東京地方裁判所平成28年1月29日判決(平26(ワ)4627号)】

【要旨】
「Japan Poker Tour」(標準文字)からなる商標に係る商標権を有する原告が,被告に対し,被告による被告各標章の使用は,原告商標権の侵害とみなされる行為である旨主張して,被告各標章の使用の差止め等を求めた事案において,被告行為ついて,商標法26条1項6号の該当性が判断された。

【キーワード】
商標法26条1項6号,商標的使用態様

【判旨】

 前記前提事実,証拠(甲24)及び弁論の全趣旨によると,「ジャパンオープンポーカー」の「mixiコミュニティ」のウェブサイトである本件ウェブページ8の「最新情報」欄には,5月10日の「トピック」として「JapanPokerTour 決勝5月11日1」との表示が,1月11日の「イベント」として「JapanPokerTour 大阪(APPT」との表示が,それぞれされていることが認められるが,このような表示のみでは,被告標章1が本件ポーカー大会の広告等として出所識別機能を果たす態様により使用されているとはいえない。
 調査嘱託の結果に照らし,被告が上記ウェブサイトの管理人であり本件ウェブページ8において被告標章1を使用したと認められるかという問題があるが,この点を措くとしても,上記によると,同ウェブページにおける同標章は,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標(商標法26条1項6号)に該当する。
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 前記前提事実,証拠(甲7)及び弁論の全趣旨によると,平成25年初め頃に被告が作成した本件チラシ(甲7)には,「JAPANPOKERTOUR/2013 SEASON 1」と大きく表示され,この表題に続いて本件ポーカー大会の紹介ないし説明がされていることが認められ,ここでは,被告標章2が,本件ポーカー大会を指す固有名詞として,ポーカー大会の開催という役務に関する広告に付されて頒布されているものと認められる。これは,出所識別機能を果たす態様により使用されたものというべきである。
そうすると,被告は,本件チラシにおいて,被告標章2を商標的に使用したということができ,同チラシにおける同標章は,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標(商標法26条1項6号)には該当しない。

【検討】

 本件では,「JapanPokerTour」等の商標の使用について,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標(商標法26条1項6号)に該当するかどうかが争われた。
 判決では,「JAPANPOKERTOUR/2013 SEASON 1」の表題に続いて,「JapanPokerTourは,全国のポーカースポットで誰でも参加できる日本規模のポーカートーナメントです。」などとポーカー大会の紹介ないし説明がされている使用態様につき,「本件ポーカー大会を指す固有名詞として」使用されていることを理由に,出所識別機能を果たす態様で使用されたものと認められ,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標(商標法26条1項6号)には該当しないとの判断がされた。説明書きがされていることから,「標章が商品・役務の内容等を説明するための表示として付されている場合」であるとして,商標的使用態様といえるか問題となり得るが,「本件ポーカー大会を指す固有名詞として」使用されていれば,商品の内容等の説明とはいえないことから,商標的使用態様に該当するとの判断は妥当なものと考えられる。
 一方,本件では,ウェブサイトの「最新情報」欄における,「トピック」として「JapanPokerTour 決勝5月11日」との表示,あるいは,「イベント」として「ジャパンポーカーツアー東京」との表示については,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標(商標法26条1項6号)に該当すると判断がされた。これは,「最新情報」の欄には,小さい文字で,特定の日のイベントとして表示がされており,単に,日本で開催されるポーカーのイベントぐらいの意味でしかなく,「本件ポーカー大会を指す固有名詞として」使用されているとまではいえないものと判断がされたからであると思われる。

以上
(筆者)弁護士・弁理士 杉尾雄一