【東京地裁令和3年4月28日(令和元年(ワ)第21993号 著作権侵害訴訟事件)】

【キーワード】
著作権法,著作物,美術の著作物,建築の著作物

【事案の概要】

 原告は,公園施設,遊園施設等に関するデザイン,企画,設計,製作等を目的として設立された株式会社であり,被告は,公共空間の施設や公園施設(セメント系遊具等)の企画,設計,製作,施工,点検,修繕等を目的とする株式会社である。また,被告は,原告の元従業員である被告代表者が,原告を退職後に設立した会社である。
 被告が平成26年から製作し各自治体に納入した滑り台(以下「本件被告滑り台」という。)について,原告が昭和52年頃から製作し各自治体に納入した滑り台(以下「本件被告滑り台」という。)と類似しており,本件被告滑り台を制作する行為は原告の著作権を侵害する行為であるとして,原告が被告に対し著作権侵害の不法行為に基づき,損害賠償請求を行った事案。

【本件原告滑り台】
本件原告滑り台は,以下のとおりであり,タコの形状を模した滑り台である。

        

【本件被告滑り台】
 本件被告滑り台のうちの一つは,以下のとおりである。

        

【争点】

・本件原告滑り台が美術の著作物に該当するか(争点1-1)
・本件原告滑り台が建築の著作物に該当するか(争点1-2)

【判決一部抜粋】(下線は筆者による。)

第1・第2 省略
第3 当裁判所の判断
1  争点1(損害賠償請求権の存否)について
(1)  争点1-1(本件原告滑り台が美術の著作物に該当するか)について
ア ・・・本件原告滑り台・・・の形状は,・・・上部にタコの頭部を模した部分を備え,正面に1本,右側面に2本,左側面に1本の計4本のタコの足を有するというものである。そして,これらのタコの足は,いずれも,子どもたちなどの利用者が滑り降りることができるスライダーとなっており,また,利用者がスライダーの上部に昇るための取っ手が取り付けられているなど,遊具である滑り台として通常有する構造を備えている。そうすると,本件原告滑り台は,利用者が滑り台として遊ぶなど,公園に設置され,遊具として用いられることを前提に製作されたものであると認められる。したがって,本件原告滑り台は,一般的な芸術作品等と同様の展示等を目的とするものではなく,遊具としての実用に供されることを目的とするものであるというべきである。
 そして,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予定されている美的創作物(いわゆる応用美術)が,著作権法2条1項1号の「美術」「の範囲に属するもの」として著作物性を有するかについては,同法上,「美術工芸品」が「美術の著作物」に含まれることは明らかであるものの(著作権法2条2項),それ以外の応用美術に関しては,明文の規定が存在しない。
 この点については,応用美術と同様に実用に供されるという性質を有する印刷用書体に関し,それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えることを要件の一つとして挙げた上で,同法2条1項1号の著作物に該当し得るとした最高裁判決(最高裁平成10年(受)第332号同12年9月7日第一小法廷判決・民集54巻7号2481頁)の判示に照らし,同条2項は,単なる例示規定と解すべきである。
 さらに,上記の最高裁判決の判示に加え,同判決が,実用的機能の観点から見た美しさがあれば足りるとすると,文化の発展に寄与しようとする著作権法の目的に反することになる旨説示していることに照らせば,応用美術のうち,「美術工芸品」以外のものであっても,実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるものについては,「美術」「の範囲に属するもの」(同法2条1項1号)である「美術の著作物」(同法10条1項4号)として,保護され得ると解するのが相当である。
 以上を前提に,本件原告滑り台が「美術の著作物」として保護される応用美術に該当するかを検討する。
イ 原告は,本件原告滑り台が,一品製作品というべきものであり,「美術工芸品」(著作権法2条2項)に当たるから,「美術の著作物」(同法10条1項4号)に含まれる旨主張する。
 そこで検討するに,著作権法10条1項4号が「美術の著作物」の典型例として「絵画,版画,彫刻」を掲げていることに照らすと,同法2条2項の「美術工芸品」とは,同法10条1項4号所定の「絵画,版画,彫刻」と同様に,主として鑑賞を目的とする工芸品を指すものと解すべきであり,仮に一品製作的な物であったとしても,そのことをもって直ちに「美術工芸品」に該当するものではないというべきである。
 本件においてこれをみると,前記アのとおり,本件原告滑り台は,自治体の発注に基づき,遊具として製作されたものであり,主として,遊具として利用者である子どもたちに遊びの場を提供するという目的を有する物品であって,「絵画,版画,彫刻」のように主として鑑賞を目的とするものであるとまでは認められない。
 したがって,本件原告滑り台が「美術工芸品」に該当すると認めることはできず,原告の上記主張は採用することができない。
ウ 原告は,本件原告滑り台が「美術工芸品」に当たらないとしても「美術の著作物」として保護される応用美術であると主張する。そこで,本件原告滑り台が,実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるものであるか否かについて,以下検討する。
(ア) タコの頭部を模した部分について
・・・本件原告滑り台のうちタコの頭部を模した部分の構成は,・・・本件原告滑り台を正面から見て,その最も高い箇所のほぼ中央部に存在しており,タコの足を模したスライダーによって形作られるなだらかな稜線から上に突き出るような格好で配置されている。そして,その形状は,本件原告滑り台のうち最も高い箇所に存在する頭頂部から,正面向かって後方にやや傾いた略鐘形をなしており,全体として曲線的な印象を与える形状であって,そうした形状と,上記のような配置等から,当該部位を見た者をして,タコの頭部を連想させるような外観となっている。さらに,その構造をみると,内部は空洞をなし,頭部に上った利用者が立てるような踊り場様の床が設置されている。また,正面,左側面及び背面にそれぞれ1か所,右側面に2か所の開口部を有しており,そのうち正面,右側面及び左側面の開口部からは後述のタコの足を模したスライダーが延びているほか,背面の開口部付近には,手でつかんだり,足を掛けたりして上り下りするための取っ手が8個取り付けられている。
 このように,タコの頭部を模した部分は,本件原告滑り台の中でも最も高い箇所に設置されているのであるから,同部分に設置された上記各開口部は,滑り降りるためのスライダー等を同部分に接続するために不可欠な構造であって,滑り台としての実用目的に必要な構成そのものであるといえる。また,上記空洞は,同部分に上った利用者が,上記各開口部及びスライダーに移動するために不可欠な構造である上,開口部を除く周囲が囲まれた構造であることによって,最も高い箇所にある踊り場様の床から利用者が落下することを防止する機能を有するといえるし,それのみならず,周囲が囲まれているという構造を利用して,隠れん坊の要領で遊ぶことなどを可能にしているとも考えられる。
 そうすると,本件原告滑り台のうち,タコの頭部を模した部分は,総じて,滑り台の遊具としての利用と強く結びついているものというべきであるから,実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるものとは認められない。
(イ) タコの足を模した部分について
・・・本件原告滑り台には,タコの頭部を模した部分から4本のスライダーが延びており,これらはいずれもタコの足を模したものであって,その形状は,直線状か曲線状かの相違はあるものの,いずれについても,なだらかな斜度をなしつつ,地面に向かって延びているほか,滑らかな板状のすべり面を有し,かつ,その左右には手すり様の構造物が付されていると認められる。
 この点,滑り台は,高い箇所から低い箇所に滑り降りる用途の遊具であるから,スライダーは滑り台にとって不可欠な構成要素であることは明らかであるところ,タコの足を模した部分は,いずれもスライダーとして利用者に用いられる部分であるから,滑り台としての機能を果たすに当たって欠くことのできない構成部分といえる。
 そうすると,本件原告滑り台のうち,タコの足を模した部分は,遊具としての利用のために必要不可欠な構成であるというべきであるから,実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるものとは認められない。
(ウ) 空洞(トンネル)部分について
・・・本件原告滑り台には,正面から見て左右に1か所ずつ,スライダーの下部に,通り抜け可能なトンネル状の空洞が配置されていると認められる。
 この構成は,滑り台としての機能には必ずしも直結しないものではあるが,前記アのとおり,本件原告滑り台は,公園の遊具として製作され,設置された物であり,その公園内で遊ぶ本件原告滑り台の利用者は,これを滑り台として利用するのみならず,上記空洞において,隠れん坊などの遊びをすることもできると考えられる。
 そうすると,本件原告滑り台に設けられた上記各空洞部分は,遊具としての利用と不可分に結びついた構成部分というべきであるから,実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるものとは認められない。
(エ) 本件原告滑り台全体の形状等について
・・・本件原告滑り台は,頭部(前記(ア)),足(前記(イ))及び空洞(前記(ウ))等によって形成されており,その全体を見ると,本件原告滑り台は,見る者をしてタコの体を模しているとの印象を与えるものであると認められる。また,とりわけ本件原告滑り台の正面からその全体を見ると,空洞のある頭部を頂点に,左右へ広がる緩やかな2本の足によって均整の取れた三角形を見て取ることができ,見栄えのよい外観を有するものということができる。
 この点,本件原告滑り台のようにタコを模した外観を有することは,滑り台として不可欠の要素であるとまでは認められないが,そのような外観は,子どもたちなどの本件原告滑り台の利用者に興味や関心を与えたり,親しみやすさを感じさせたりして,遊びたいという気持ちを生じさせ得る,遊具のデザインとしての性質を有することは否定できず,遊具としての利用と関連性があるといえる。また,本件原告滑り台の正面が均整の取れた外観を有するとしても,そうした外観は,前記(ア)及び(イ)でみたとおり,滑り台の遊具としての利用と必要不可欠ないし強く結びついた頭部及び足の組み合わせにより形成されているものであるから,遊具である滑り台としての機能と分離して把握することはできず,遊具のデザインとしての性質の域を出るものではないというべきである。
 そうすると,本件原告滑り台の外観は,遊具のデザインとしての実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるものとは認められない。
(オ) 以上のとおり,本件原告滑り台は,その構成部分についてみても,全体の形状からみても,実用目的を達するために必要な機能に係る構成と分離して,美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるものとは認められないから,「美術の著作物」として保護される応用美術とは認められない。
(カ) これに対し,原告は,本件原告滑り台の実用目的は滑り台自体としての機能を前提に把握すべきであり,高所に上がるための手段と,滑り降りるためのスライダーがあればその機能を果たすことができるので,表現の選択の幅は広いとした上で,本件原告滑り台のタコの頭部を模した部分,タコの足を模した部分及び空洞(トンネル)部分は,滑り台の機能から必然的に創作できるものではなく,滑り台の機能とは独立して存在する特徴であって,製作者であるBの個性が表われた部分といえるから,そのような部分を有する本件原告滑り台は「美術の著作物」に該当する応用美術であると主張する。
 しかしながら,ある製作物が「美術の著作物」たる応用美術に該当するか否かに当たって考慮すべき実用目的及び機能は,当該製作物が現に実用に供されている具体的な用途を前提として把握すべきであって,製作物の種類により形式的にその目的及び機能を把握するべきではない。原告の主張は,滑り台には様々な形状や用途のものがあるにもかかわらず,本件原告滑り台が滑り台として製作されたものであるという点を過度に重視するものであり,子どもたちなどの利用者が本件原告滑り台において具体的にどのような遊び方をするかを捨象している点で相当ではない。
 また,原告の上記主張は,本件原告滑り台の表現の選択の幅が広く,製作者であるBの個性が表われていることを根拠とするものであるが,その点は,著作物性(著作権法2条1項1号)の要件のうち,「思想又は感情を創作的に表現したもの」との要件に係るものであって,「美術」「の範囲に属するもの」との要件に係るものではないというべきである。
したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。
エ 以上によれば,本件原告滑り台は,著作権法10条1項4号の「美術の著作物」に該当せず,同法2条1項1号所定の著作物としての保護は認められないというべきである
(2)  争点1-2(本件原告滑り台が建築の著作物に該当するか)について
ア 前記(1)アで認定したとおり,本件原告滑り台は,公園に設置される遊具であり,その形状は,・・・上部にタコの頭部を模した部分を備え,4本のタコの足を模したスライダー等を有しているものである。そして,著作権法においては,著作物の例示として「建築の著作物」(著作権法10条1項5号)が掲げられているものの,「建築」についての定義は置かれていない。そのため,「建築の著作物」の意義を考えるに当たっては,建築基準法所定の「建築物」の定義を参考にしつつ,文化の発展に寄与するという著作権法の目的に沿うように解釈するのが相当である。そこで検討するに,建築基準法2条1号が「建築物」という用語の意義について「土地に定着する工作物のうち,屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)」等と規定しており,本件原告滑り台も,屋根及び柱又は壁を有するものに類する構造のものと認めることができ,かつ,これが著作権法上の「建築」に含まれるとしても,文化の発展に寄与するという目的と齟齬するものではないといえる。そうすると,本件原告滑り台は同法上の「建築」に該当すると解することができる。
 このように,本件原告滑り台が同法上の「建築」に該当するとしても,その「建築の著作物」(著作権法10条1項5号)としての著作物性については,「文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」(同法2条1項1号)か否か,すなわち,同法で保護され得る建築美術であるか否かを検討する必要がある。具体的には,「建築の著作物」が,実用に供されることが予定されている創作物であり,その中には美的な要素を有するものも存在するという点で,応用美術に類するといえることから,その著作物性の判断は,前記(1)アで説示した応用美術に係る基準と同様の基準によるのが相当である。
 そこで,本件原告滑り台が,建築物としての実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるか否かにつき,以下,検討する。
イ 前記(1)で説示したとおり,本件原告滑り台の形状は,頭部,足部,空洞部などの各構成部分についてみても,全体についてみても,遊具として利用される建築物の機能と密接に結びついたものである。また,本件原告滑り台は,・・・上記各構成部分を組み合わせることで,全体として赤く塗色されていることも相まって,見る者をしてタコを連想させる外観を有するものであるが,こうした外観もまた,子どもたちなどの利用者に興味・関心や親しみやすさを与えるという遊具としての建築物の機能と結びついたものといえ,建築物である遊具のデザインとしての域を出るものではないというべきである。
 したがって,本件原告滑り台について,建築物としての実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるとは認められない。
ウ ・・(省略)・・
エ 以上によれば,本件原告滑り台は,著作権法10条1項5号の「建築の著作物」に該当せず,同法2条1項1号所定の著作物としての保護は認められないというべきである。
(3)  小括
 以上のとおり,本件原告滑り台は,「美術の著作物」(著作権法10条1項4号)にも,「建築の著作物」(同項5号)にも該当せず,これについて著作権法2条1項1号所定の著作物としての保護は認められないというべきである。
・・(以下,省略)・・

【検討】

1 著作物性
 著作権法において保護される著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(同法2条1項1号)である。すなわち,対象物が著作物として保護されるためには,当該対象物に,①思想又は感情、②創作性、③表現、④文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものである,という4つの要件が備わっている必要がある。当該要件が備わっていない場合,いくらデザインに工夫を施したとしても著作物としては保護されないこととなる。

2 美術の著作物
(1)定義
 著作物のうち,④の要件において「美術」の範囲に属するものは「美術の著作物」である。
ここで,④の要件は,発明などの工業所有権の保護の対象である技術の範囲に属するものを除くという趣旨の要件であると解されているところ,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予定されている美的創作物(いわゆる応用美術)が,「美術の著作物」といえるか,すなわち,当該④要件を満たすかが問題となる。この点について,従前の最高裁は,応用美術それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備える場合は,同法2条1項1号の著作物に該当し得ると判示している(ゴナ書体事件・最高裁平成10年(受)第332号同12年9月7日)。
(2)本件
 本件では,本件原告滑り台は遊具としての実用に供されることを目的とするものであるため,「美術の著作物」として保護される応用美術に該当するか,すなわち,④の要件を満たすかという点が問題となった。
本件判示では,上記のゴナ書体事件を引用し,「実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分」を把握できる場合は,「美術」「の範囲に属するもの」として,「美術の著作物」に該当するとの規範をたて,本件原告滑り台のあてはめを行った。
 結論として,本件原告滑り台の各部分(タコの頭部を模した部分・タコの足を模した部分・空洞部分・全体の形状等)は,遊具としての利用に必要不可欠なものであり,「建築物としての実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分」ではないとして「美術の著作物」の該当性を否定している。
判断にあたって,「実用目的及び機能は,当該製作物が現に実用に供されている具体的な用途を前提として把握すべき」として,実際に子供たちが本件原告滑り台においてどのように遊んでいるかを考慮している点は同種事案における参考となると考える。

3 建築の著作物
(1)定義
 「建築の著作物」(著作権法第10条1項5号)として保護されるためには,通常のありふれた建築物では足りず,客観的,外形的に見て,一般住宅の建築において通常加味される程度の美的創作性を上回り,居住用建物としての実用性や機能性とは別に,独立して美的鑑賞の対象となり,建築家・設計者の思想又は感情といった文化的精神性を感得せしめるような造形芸術としての美術性を備えることが必要と解されている(大阪高判平成16年9月29日)。建築物は実用性を有する必要があり,建築基準法等の法的規制もあるため,表現の選択肢が限定され,ありふれたものとなりやすいところ,著作物として保護されるためには,当該ありふれた建築物の創作性を超えて,①から④の要件が認められることを必要としているものと考える。
(2)本件の検討
本件では,本件原告滑り台が建築基準法上の「建築」に該当するため,「建築の著作物」に該当するかがが問題となった。
本件判示は「建築の著作物」の該当性について,「『建築の著作物』が,実用に供されることが予定されている創作物であり,その中には美的な要素を有するものも存在するという点で,応用美術に類するといえることから,その著作物性の判断は,・・・応用美術に係る基準と同様の基準によるのが相当」として,「本件原告滑り台が,建築物としての実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるか」という点から判断した。
建築の著作物について応用美術としての側面を有することはこれまでも議論されていたが,本件では,応用美術を著作物として保護するための基準が同様に「建築の著作物」へも妥当することを判示したものである。
結論として,「建築の著作物」への該当性を否定したが,今後「建築の著作物」の該当性を判断する際の参考となる裁判例と考える。

以上
(筆者)弁護士 市橋景子