【平成28年 1月20日判決(知財高判平27(行ケ)10159号)】

【概要】
本判決は、図形商標と文字商標が多段で併記されている場合に、文字商標が周知である場合は、図形部分を要部として類否を判断することを許容しませんでした。

【キーワード】
結合商標、類否、著名、図形、併記、つつみのおひなっこや事件

1.本願商標

2.判旨

 また,本願商標の構成中の「Reebok」の文字部分は,運動用の被服や履物等の製造販売を主たる業務とするスポーツブランドである原告の商号の略称又はその展開するブランドの名称,あるいは,その業務に係る商品の出所を表示する商標として,本件審決時において,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたと認められる(甲20~24,53。なお,この点について,当事者間に争いがない。)。
 そうすると,本願商標の構成中の「Reebok」の文字部分は,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるから,上記文字部分から,「リーボック」という称呼も生じるというべきである。

・・・中略・・・

 そうすると,本願商標については,全体として一体的に観察し,又は商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える「Reebok」の文字部分を抽出して,引用商標との類否を判断するのが相当である。

・・・中略・・・

 本願商標と引用商標とを対比すると,本願商標と引用商標とは,「ROYAL FLAG」の構成を有する点で共通するものの,本願商標は中央に旗状の図形部分及びその上段に「Reebok」の文字部分の各構成を有するのに対し,引用商標はこれらの構成を有しないから,両商標は,外観を異にする。

3.検討

 知財高判平成24年11月29日(平23(行ケ)10446号)では、結合商標の一部にデザイン化された部分を含む場合、当該部分を取引者、需要者の注意を喚起させる特徴部分と認め一部抽出を認めています。
一方、本判決は、図形商標と文字商標が多段で併記されている場合に、文字商標が周知である場合は、図形部分を要部として類否を判断することを許容していません。
 したがって、図形商標(デザイン化された商標)であっても、必ずしも一部抽出が認められるわけではないことになります。
 なお、本判決と同じ判断を示した事例として知財高判平成29年 7月27日(平29(行ケ)10030号)があります。

(文責)弁護士・弁理士 杉尾雄一