【平成29年 7月27日判決(知財高判 平29(行ケ)10030号)】

【概要】
本判決は、図形商標と文字商標が多段で併記されている場合に、文字商標が周知である場合は、図形部分を要部として類否を判断することを許容しませんでした。

【キーワード】
結合商標、類否、著名、図形、併記、つつみのおひなっこや事件

1.事例


使用商標1
使用商標2

2.判旨

 これらの事実によると,「オルガノ」及びその英語表記である「ORGANO」の表示は,被告の略称又はハウスマークを表示するものとして,本件商標の登録出願日前から,取引者,需要者に広く知られるようになっており,それに伴い,「オルガノ」又はその英語表記である「ORGANO」を含む使用商標についても,同時点までの間に,取引者,需要者に広く知られて周知,著名となっていたと認めるのが相当である。
 そして,使用商標は,ほぼ同大の図形部分及び「ORGANO」又は「オルガノ」の文字部分から構成されているところ,このうち図形部分からは特段の観念や称呼が生じないのに対し,「ORGANO」及び「オルガノ」という文字部分は,その称呼が被告の略称及びハウスマークと同一であり,商品及び役務の出所を取引者,需要者に強く印象付ける部分であると考えられる。そうすると,使用商標のうち,「ORGANO」又は「オルガノ」の文字部分は,図形部分とは独立して出所識別標識としての機能を果たすものということができる。

・・・中略・・・

 これに対し,原告は,①被告商標は,水処理装置事業の分野では周知であるとしても,薬品の分野においては,周知,著名ではない,②被告が行ってきた宣伝広告は一般的な企業活動の一環にすぎず,新聞紙上に掲載した題字広告には「ORGANO」の表示はなく,被告の取り扱う薬品類を表示しているものもない,③取引者,需要者は,使用商標の「ORGANO」又は「オルガノ」の文字部分よりも水玉模様の図形に注意をひかれる,④被告商標は,特許情報プラットフォームの「日本国周知,著名商標」に掲載されておらず,「ORGANO」又は「オルガノ」についての登録防護標章も存在しないなどと主張し,被告商標が周知,著名であることを争う。

・・・中略・・・

 上記③については,前記判示のとおり,使用商標のうち「ORGANO」又は「オルガノ」の文字は,図形部分とは独立して出所識別標識としての機能を果たすものと認めるのが相当である。

3.検討

 知財高判平成24年11月29日(平23(行ケ)10446号)では、結合商標の一部にデザイン化された部分を含む場合、当該部分を取引者、需要者の注意を喚起させる特徴部分と認め一部抽出を認めています。
 一方、本判決は、図形商標と文字商標が多段で併記されている場合に、文字商標が周知である場合は、図形部分を要部として類否を判断することを許容していません。
 したがって、図形商標(デザイン化された商標)であっても、必ずしも一部抽出が認められるわけではないことになります。
 なお、本判決と同じ判断を示した事例として知財高判平成28年 1月20日(平27(行ケ)10159号)があります。

(文責)弁護士・弁理士 杉尾雄一