【平成25年 3月 7日判決(大阪高判 平23(行ケ)2238号)】

【概要】
本判決は、無効理由を包含する商標登録に基づいては、無効審判による無効審決の確定を待つことなく、登録商標使用の抗弁が認められないものと判示しました。

【キーワード】
登録商標使用の抗弁、無効理由

1.判旨

 控訴人は,被告標章8及び9の使用は,控訴人が有している被告登録商標1及び3の使用に該当するから,本件商標の禁止権はそもそも及ばない旨主張する。
しかしながら,被告標章8と被告登録商標3は,「baby」又は「baby」の字の大きさ等が異なっている上,これまで述べたところによれば,前記前提事実記載の特許庁の審決(甲 284)のとおり,被告登録商標3の登録は商標法4条1項11号に違反してされたものであり,無効事由(同法46条1項1号)があるというべきである。また,被告標章9と被告登録商標1は同一といえるが,これまで述べたところによれば,被告商標登録1の登録も同様の無効事由が存するといえ,そのような無効とされるべき登録商標の権利行使をすることは,権利の濫用として許されないと解すべきである。
 したがって,被告登録商標1及び3の登録の事実をもって,被告標章8及び9による本件商標への侵害性を否定することはできない。

2.検討

 本判決では、無効理由を包含する商標登録に基づいては、無効審判による無効審決の確定を待つことなく、登録商標使用の抗弁が認められないものと判示されています。
 商標権者は、登録商標使用の抗弁が認められるものと考えられていますが、無効理由がある場合は、登録商標使用の抗弁が制限されることが明確に判断されている点で、本裁判例は先例性があるものと考えられます。

(文責)弁護士・弁理士 杉尾雄一