【知財高裁平成30年4月25日判決(平成28年(ネ)10101号)】

【ポイント】
ツイッターにおけるリツイートの著作権侵害の該当性を判断した事例

【キーワード】
ツイッター,リツイート,複製権,公衆送信権,公衆伝達権,氏名表示権,同一性保持権,名誉声望保持権

 事案1

 本件は,本件写真の著作権を有するXが,「ツイッター」において,①氏名不詳者により無断でアカウントのプロフィール画像として本件写真を用いられ,その後当該アカウントのタイムライン及びツイート(投稿)にも表示等されたこと,②氏名不詳者らにより無断で上記①のツイートのリツイートがされ,当該氏名不詳者らのアカウントのタイムラインに表示されたことにより,Xの本件写真についての著作権(複製権,公衆送信権[送信可能化権を含む。],公衆伝達権。以下,これらを総称して「本件著作権」という。)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権,名誉声望保持権。以下,これらを総称して「本件著作者人格権」という。)が侵害されたと主張して,プロバイダ責任制限法4条1項に基づき,上記行為のそれぞれについて,発信者情報の開示を求めた事案である。
 1審判決は,①の発信者情報開示のみ認め,②のリツイートの発信者情報開示は認めなかった。そこで,控訴されたのが本件である。

知財高裁の判断

 知財高裁は,リツイート行為は,公衆送信権侵害,複製権侵害,及び公衆伝達権侵害には該当しないと判断した。
 他方,同一性保持権については,「・・・本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は,流通情報2(2)の画像とは異なるものである。この表示されている画像は,表示するに際して,本件リツイート行為の結果として送信されたHTMLプログラムやCSSプログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,上記のとおり画像が異なっているものであり,流通情報2(2)の画像データ自体に改変が加えられているものではない。 しかし,表示される画像は,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものとして,著作権法2条1項1号にいう著作物ということができるところ,上記のとおり,表示するに際して,HTMLプログラムやCSSプログラム等により,位置や大きさなどを指定されたために,本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3~5のような画像となったものと認められるから,本件リツイート者らによって改変されたもので,同一性保持権が侵害されているということができる。」として,同一性保持権侵害を肯定した。
 また,氏名表示権については,「本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像には,控訴人の氏名は表示されていない。そして,前記(1)のとおり,表示するに際してHTMLプログラムやCSSプログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3~5のような画像となり,控訴人の氏名が表示されなくなったものと認められるから,控訴人は,本件リツイート者らによって,本件リツイート行為により,著作物の公衆への提供又は提示に際し,著作者名を表示する権利を侵害されたということができる。」として,氏名表示権侵害を肯定した。

検討

 企業活動として,営業・宣伝広告などに,ツイッター等のSNSを利用する機会が増えている。その際,従前より,ツイート行為自体が著作権侵害にならないように留意することは注意喚起されていた。本件判決によると,リツイート行為も著作者人格権侵害(同一性保持権・氏名表示権)となりうる可能性が示唆されたので,企業活動としても,さらなる注意が必要となる。
 また,下級審の判断ではあるが,リツイート自体が名誉棄損に該当しうると判示した裁判例も存在する(東京地方裁判所平成27年11月25日判決(事件番号:平成26年(ワ)第25111号))。
 企業でのSNSを利用には,リツイートも含め社内ルールを整備する等して,他社の権利に配慮することが必要となろう。

以上
(文責)弁護士・弁理士 高橋正憲


1 本件は,他にも争点があるが,紙面の都合上一部分のみ紹介している。