【令和3年10月6日(知財高裁 令和3年(行ケ)第10032号)】

【判旨】

 本件商標に係る特許庁の取消2018-890086号事件について商標法第4条第1項第11号及び同15に係る判断は正当であるとして,請求を棄却した事案である。

【キーワード】

商標の類否判断,ヒルドプレミアム,Hirudoid,ヒルドイド,HIRUDOID,商標法第4条第1項第11号,商標法第4条第1項第15号

【事案の概要】

以下,証拠等は適宜省略する。
1 特許庁における手続の経緯等
⑴ 被告は,次の商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。
登録番号 第6088573号
登録出願日 平成30年1月29日
登録査定日 平成30年9月27日
設定登録日 平成30年10月12日
登録商標 ヒルドプレミアム(標準文字)
商品及び役務の区分 第3類
指定商品 化粧品

⑵ 原告は,次の4件の商標(以下,総称して「引用商標」という。)の商標権者であり,いずれの商標も,現在有効に存続している。
ア 登録第459931号商標(以下「引用商標1」という。)
登録商標 「Hirudoid」
登録出願日 昭和29年5月12日
設定登録日 昭和30年2月10日
書換登録日 平成17年10月19日
商品及び役務の区分 第5類
指定商品 「薬剤(蚊取線香その他の蚊駆除用の薫料・日本薬局方の薬用せっけん・薬用酒を除く。),キナ塩,モルヒネ,チンキ剤,シロップ剤,煎剤,水剤,浸剤,丸薬,膏薬,散薬,錠薬,煉薬,生薬,薬油,石灰,硫黄(薬剤),鉱水,打粉,もぐさ,黒焼き,防腐剤,防臭剤(身体用のものを除く。),駆虫剤,ばんそうこう,包帯,綿紗,綿撤糸,脱脂綿,医療用海綿,オブラート」

イ 登録第1647949号商標(以下「引用商標2」という。)
登録商標 「ヒルドイド」
登録出願日 昭和56年1月30日
設定登録日 昭和59年1月26日
書換登録日 平成16年11月4日
商品及び役務の区分 第5類
指定商品 「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド」並びに第1類及び第10類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

ウ 登録第6017880号商標(以下「引用商標3」という。)
登録商標 「ヒルドイド」(標準文字)
登録出願日 平成29年5月26日
設定登録日 平成30年2月9日
商品及び役務の区分 第3類
指定商品 「化粧品,せっけん類」

エ 登録第6017881号商標(以下「引用商標4」という。)
登録商標 「HIRUDOID」(標準文字)
登録出願日 平成29年5月26日
設定登録日 平成30年2月9日
商品及び役務の区分 第3類
指定商品 「化粧品,せっけん類」

⑶ 原告は,令和元年12月26日,引用商標に照らし,本件商標が商標法4条1項11号及び15号に該当するとして,商標登録無効審判(無効2019-890086号,以下「本件審判」という。)を請求した。
特許庁は,令和2年12月25日,本件審判の請求は成り立たない旨の審決をし,その謄本は,令和3年1月15日,原告に送達された。

⑷ 原告は,令和3年2月12日,本件訴訟を提起した。

【争点】

本件商標が,商標法第4条第1項第11号及び商標法第4条第1項第15に該当するか否か。

【判旨抜粋】

第4 当裁判所の判断
1 後掲各証拠等によれば,次の事実が認められる。
⑴ 医薬品,医薬部外品,化粧品,医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)は,薬機法による規制の対象となっている。
薬機法の主管官庁は厚生労働省である。また,PMDAは,平成14年法律第192号に基づき設立され,医薬品等の品質,有効性及び安全性についての審査等の業務を行う(同法3条,15条)。
⑵ 薬機法が定義する「医薬品」の中には,医師若しくは歯科医師によって使用され又はこれらの者の処方箋若しくは指示によって使用されることを目的として供給される「医療用医薬品」と,それ以外の「一般用医薬品」がある。
また,一般用医薬品の中には,医療用医薬品だった医薬品のうち,一定の要件(副作用等)を満たしたものについて,有効成分や用法・用量が同じまま一般用医薬品として処方箋不要で購入できるように販売が許可されたもの(以下「スイッチOTC薬」という。)がある(甲65の1,65の2)。
⑶ 薬機法が定義する「医薬部外品」は,いわば「医薬品」と「化粧品」との間に位置する。
薬機法2条2項3号,同条1項2号によれば,「医薬部外品」の中には,人の疾病の治療に使用されることが目的とされている物のうち,厚生労働大臣が指定するものであって,人体に対する作用が緩和なものが含まれている。
⑷ 一般に製造販売されている化粧品のうちには,「有効成分」が配合され,薬機法上の「医薬部外品」に該当するものがあり,「薬用化粧品」と呼ばれている。
⑸ 原告薬剤は,医療用医薬品であり,医師等によって使用され又はこれらの者の処方箋若しくは指示がなければ患者に販売することはできない。
⑹ 原告は,原告使用商標を医療用医薬品である原告薬剤を表示する商標として使用しているが,薬用化粧品を含む化粧品は販売しておらず,引用商標3及び4を使用していない。
⑺ 医療用医薬品の名称については,承認等を受けた名称又は一般的名称以外の名称を使用してはならない旨の規制があることから,原告は,原告薬剤の広告及び容器表示において原告使用商標である「ヒルドイド」若しくは「Hirudoid」という名称を略することなく使用しており,また,取引者及び需要者との間において「ヒルドイド」が「ヒルド」と略して称されている実情は認められない。

2 取消事由1(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)について
⑴ 類否の判断基準
商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照)。
⑵ 本件商標と引用商標との類否判断
上記⑴の基準により本件商標を検討するに,本件商標は「ヒルドプレミアム」との標準文字からなり全体としてまとまりよく構成されているが,「プレミアム」は「高級な。上等な。」を意味する英語形容詞由来の語として一般に広く知られているから,本件商標は,「ヒルド」と「プレミアム」とを組み合わせた結合商標と解される。そして,別紙1のとおり,証拠によれば,化粧品の分野において,「プレミアム」の文字は,既存品に特別な成分を配合することによって優れた商品である旨を表示するため使用されているから,本件指定商品(化粧品)との関係においては,本件商標の「プレミアム」の部分は,出所識別標識としての機能は低いと認められる。一方,「ヒルド」の部分は,後記のとおり造語と認められるから,出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
したがって,本件商標と引用商標との類否判断に当たっては,本件商標は,全体の構成文字に相応した「ヒルドプレミアム」の他,「ヒルド」の部分を抽出して引用商標と対比するのが相当である。
また,類否判断においては,まず,構成が最も類似する引用商標2及び3と対比することとする。
ア 外観
引用商標2及び3は「ヒルドイド」を標準文字で表してなるものであるから,本件商標の全体構成「ヒルドプレミアム」と対比すると,両者は語頭の「ヒルド」を共通にするのみであり,文字数及び構成全体の文字において明らかに相違する。また,本件商標のうち「ヒルド」の部分を抽出した場合においても,「ヒルド」を共通にするものの,本件商標は,5文字という比較的少ない文字数からなる引用商標2及び3との間で2文字の相違があり,後記イの通り,引用商標2及び3の「ヒルドイド」は造語と認められるところ,引用商標において「ヒルド」と「イド」を分離して観察しなければならない理由はないから,引用商標との比較においては,文字数及び構成全体の文字が相違する。したがって,本件商標と引用商標2及び3とはいずれも明確に区別できるというべきである。
イ 観念
引用商標の由来は「ドイツ語のHirudo(蛭属)とoid(~の様なもの)を組み合わせたもの」と認められるものの(甲11),そのような事実は一般的に知られておらず,辞書等に載録された既成語ではないから,本件商標のうち「ヒルド」の部分及び引用商標「ヒルドイド」は,いずれも,特定の意味合いを有しない一種の造語として理解され,特定の観念を生じない(なお,この点につき,被告は,「ヒルド」は北欧神話の女神の名前及び競走馬の産駒の名前であるからその観念を生ずる旨主張するが,インターネット上を検索すればそのような検索結果も得られたという程度のことにすぎず,化粧品の分野において取引者・需要者が「ヒルド」の語からこれらの名前を連想することを認めるに足りる証拠はない。)。したがって,観念において両者を比較することはできない。
ウ 称呼
引用商標2及び3からは「ヒルドイド」との称呼を生じ,本件商標の全体構成「ヒルドプレミアム」からは「ヒルドプレミアム」との称呼を生じる。両者は語頭の「ヒルド」の部分のみ称呼を共通にしているにすぎないから,その構成音及び音数において明らかに相違する。また,本件商標のうち「ヒルド」の部分を抽出した場合でも,本件商標「ヒルド」と引用商標2及び3の「ヒルドイド」とは,前者が3音で後者が5音からなり,後者には語尾に濁音を含む「イド」が付加されていること,前記の通り両者はいずれも造語であって,「ヒルドイド」を「ヒルド」と略して使用する取引の事情もなく,「ヒルドイド」を「ヒルド」と「イド」に分離して観察すべき理由はないから,両者はその構成音及び音数が相違し,容易に聴別することができる。
エ まとめ
上記アないしウのとおり,本件商標と引用商標2及び3とは,全体構成を対比した場合でも,本件商標のうち「ヒルド」の部分を抽出して対比した場合でも,観念において比較できず,外観及び称呼において明確に区別できる。
そうすると,本件指定商品が「化粧品」であって,その需要者としては薬用化粧品のみならずその他の化粧品を含む一般消費者が想定されること,医薬品とは区別して販売されるものであること,必ずしも高価な商品ばかりとは限らないことなどの化粧品としての一般的・恒常的な取引の実情を考慮しても,本件商標と引用商標2及び3とは類似しないと認めるのが相当である。
以上の点からすれば,本件商標と引用商標1及び4とが類似しないことも明らかである。

(中略)

3 取消事由2(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について
⑴ 判断基準
商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」とは,当該商標をその指定商品等に使用したときに,当該商品等が他人の商品等に係るものであると誤信されるおそれ(狭義の混同を生ずるおそれ)がある商標のみならず,当該商品等が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ(広義の混同を生ずるおそれ)がある商標を含むものと解するのが相当である。そして,「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性や独創性の程度や,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者,需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品等の取引者,需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである(最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁参照)。
⑵ 本件商標と原告使用商標との類似性の程度
上記1で検討したとおり,本件商標と原告使用商標とは,商標法4条1項11号該当性において非類似の商標である。また,原告使用商標には本件商標と共通する文字「ヒルド」が語頭にあってそれが5文字中の3文字を占めていることを考慮しても,前記のとおり,本件商標も引用商標もともに造語と認められるから何ら共通した観念は生ぜず,かえって両者とも造語であって「ヒルド」と「イド」を分離して観察する理由もないことを考慮すると,外観及び称呼における類似性の程度は低いというべきである。
⑶ 原告使用商標の独創性の程度
原告使用商標は造語であり,日本語としての語感も特異なものといえるから,独創性の程度は高いといえる。もっとも,「薬剤」及び「化粧品」の指定商品について,語頭に「ヒルド」を冠した登録商標として「ヒルドシン」「HIRDSYN」が存在するから(甲14),語頭に「ヒルド」を冠した商標という意味での原告使用商標の独創性の程度は必ずしも高くない。
⑷ 原告使用商標の周知著名性の程度

(中略)

イ 検討
・・・本件商標の登録出願当時,原告使用商標は,処方薬としての原告薬剤を表示する商標として,処方薬の需要者である皮膚科の医師等の医療関係者の間において,広く知られていたものと認められる。これに対し,化粧品としての用途が,雑誌記事に取り上げられるなどして一般に知られるようになったのは,証拠上は平成26年以降である上,その紹介記事の内容(別紙2)をみても,「知る人ぞ知る」という取り上げ方をされており,その時点において既に周知著名であったとはいえない。そして,これらの記事においては原告薬剤は処方薬であることへの注意喚起がなされていること,原告が医師等に対して美容目的での処方をしないように啓発していることも踏まえると,本件商標の登録出願(平成30年1月29日)の時点において,化粧品の需要者である一般消費者の間で,原告使用商標が周知著名であったとまではいえない。
また,事実(キ)ないし(ケ)のとおり,これらの記事が出た後に,複数の事業者からヘパリン類似物質含有商品が相次いで販売された事実,その広報宣伝において原告薬剤を引き合いに出すものや,名称に「ヒル」又は「ヒルド」を含むものが多くみられる事実は,化粧品の分野におけるヘパリン類似物質含有商品という市場自体が,原告薬剤の美容目的への流用という事態によって成立したという経緯を反映するものではあるが(例えば(2018(平成30)年12月6日付け「日経doors」記事)の「『ヒルドイド』で知られる医療用保湿剤の成分,ヘパリン類似物質を配合した市販薬とコスメが,18年秋に相次いで登場した。背景には,化粧品代わりに求める女性が増え,健康保険財政を圧迫するまでになったという事情がある。」との記載),そのような経緯があるからといって,医療用医薬品である原告薬剤の名称としての原告使用商標が,化粧品の分野において周知著名性を獲得していたことになるものではない。
なお,本件アンケートにおいてヒルドイドの「認知度」が5割ないし6割にのぼっていたとしても,これらの「認知度」は,皮膚の乾燥に起因すると考えられるトラブルを抱えて何らかの皮膚薬を最近になって使用していた者の間でのものであるから,原告薬剤が処方薬の分野で5割以上の高い市場占有率を得ていることに照らして,本件アンケートにおける「認知度」が高くなることはある程度必然的であり,化粧品の分野における一般消費者の間での周知著名性を明らかにするものではない。

(中略)

⑸ 本件指定商品(化粧品)と原告薬剤との性質,用途又は目的における関連性の程度
ア 医薬品,医薬部外品及び化粧品の関係を整理すると前記1のとおりである。これによれば,効能が強く,また法的規制も厳重な順に,医療用医薬品,一般用医薬品,薬用化粧品(医薬部外品),その他の化粧品,となる。
そうすると,医療用医薬品と化粧品(薬用化粧品も含む。)との間には,一般用医薬品という別のカテゴリーの商品が存在しているから,医療用医薬品と化粧品との間における性質,用途又は目的における関連性は,必ずしも強いとはいえない。この点,医療用医薬品と一般用医薬品との間においては,スイッチOTC薬のようにその間を移行する商品もあるから,関連性が相当程度に強いといえるのとは事情を異にする。

(中略)

⑹ 商品の取引者・需要者の共通性その他取引の実情及び本件指定商品の取引者・需要者において普通に払われる注意力について
ア 本件指定商品(化粧品)の需要者は一般消費者であるのに対して,原告薬剤(医療用医薬品)の本来の需要者は医師及び薬剤師であるから,需要者の共通性は低い。この点,美容目的で原告薬剤を購入しようとする一般消費者も一定程度は存在するものの,それは,原告自身が予定しない原告薬剤の購入目的であるから,重視すべき事情とはいえない。

(中略)

4 結論
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法4条1項11号及び15号に違反してされたものではないから同法46条1項の規定によりその登録を無効とすることはできないという審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。

【解説】

 本件は,商標権に係る審決取消訴訟である。特許庁は,本件商標について,商標法第4条第1項第11号及び商標法第4条第1項第15号[1]について該当しないとの判断を行い,裁判所は当該判断を追認した[2]
 本件は,引用商標のうち,実際に原告が使用している商標としては,医薬品であることに特徴がある。
裁判所は,まず,商標法第4条第1項第11号に関して,上述のように,原告が使用している商標としては,医療用医薬品を表示する商標としてのみであり,薬用化粧品を含む化粧品を販売していないことを認定した上で,最高裁の判例に従って,外観,称呼,観念に分けて引用商標(最も構成が類似する引用商標2及び3)と本件商標との対比を行った。
当該対比の結果として,裁判所は,「全体構成を対比した場合でも,本件商標のうち「ヒルド」の部分を抽出して対比した場合でも,観念において比較できず,外観及び称呼において明確に区別できる」と判断した。
 つぎに,裁判所は,商標法第4条第2項第12号に関して,最高裁の判例に従い,「当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性や独創性の程度や,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者,需要者の共通性その他取引の実情」について,検討を行った。
 当該検討の結果,裁判所は,上述のように本件商標と原告使用商標とは非類似であって,原告の使用商標が「化粧品の需要者である一般消費者の間で,原告使用商標が周知著名であったとまではいえ」ず,他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性としても医療用医薬品と化粧品との間に強い関連性はなく,商品の取引における実情として需要者の共通性は低いと判断した。
 本件は,医療用医薬品に使用している引用商標についての珍しい事例であり,実務上参考になると思われる。


[1] 第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。

(中略)

十一 当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

(中略)

十五 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)

[2] (商標登録の無効の審判)

第四十六条 商標登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる。この場合において、商標登録に係る指定商品又は指定役務が二以上のものについては、指定商品又は指定役務ごとに請求することができる。

一 その商標登録が第三条、第四条第一項、第七条の二第一項、第八条第一項、第二項若しくは第五項、第五十一条第二項(第五十二条の二第二項において準用する場合を含む。)、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条の規定に違反してされたとき。

弁護士 宅間仁志