【令和3年10月6日(知財高裁 令和3年(行ケ)第10036号)審決取消請求事件】

【キーワード】
商標の類否、商標法4条1項11号

【概要】
 本件は、商標の無効審判における商標の類否に関する事例判断である。原告である平塚製菓株式会社は、クラシエフーズ株式会社の保有する本件商標

について、引用商標

に基づき、商標法4条1項11号(引用商標との類似)を主張し、無効審判を請求した。
 審決は、本件商標を有効として維持したので、原告は本件審決取消訴訟を提起した。
 本判決は、以下のとおり述べて、本件商標と引用商標は非類似であるとして、本件商標の登録を維持した。

第1 判旨抜粋

 商標の類否は、対比される商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかも、その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である。

 また、商標の外観、観念又は称呼の類似は、その商標を使用した商品又は役務につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、したがって、右3点のうちその1つにおいて類似するものであっても、他の2点において著しく相違することその他取引の実情によって、なんら商品又は役務の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきではない(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁)。

⑴ 外観

 本件商標は、「スイーツ」と「パーティー」を二段書きにしたものであり、引用商標は、「スイートパーティー」と「SWEET PARTY」を二段書きにしたものであるから、いずれも結合商標であるところ、一見して外観は異なる。

 確かに、カタカナ表記の部分に着目すれば、本件商標と引用商標とは、「スイーツ」の「ツ」と「スイート」の「ト」が異なるのみであるが、本件商標は、「スイーツ」と「パーティー」を二段書きにしたものであり、しかも名詞と名詞が結合した商標であるから、上段の「スイーツ」を分離して観察することが可能である一方、引用商標は「スイートパーティー」と切れ目なく横書きされており、しかも、「スイート」の部分は形容詞であって必然的に名詞の「パーティー」を修飾する関係にあるから、引用商標の「スイートパーティー」の部分は、外観上も不可分一体のものとして強く結びついている点でも異なる。しかも、・・・「スイーツ」という語と「スイート」という語は別の語として観念され、実際にも区別されて用いられていることからすると、通常の注意力を有する取引者・需要者からみれば、本件商標と引用商標のカタカナ表記の部分である「スイートパーティー」とは外観上明確に区別することが可能であるから、本件商標と引用商標とは、外観上非類似と認めるのが相当である。

⑵ 観念

ア 国語辞典の記載

 本件商標と引用商標(スイートパーティー)は、「スイーツ」という部分と「スイート」という部分が異なる。

 国語辞典には、「スイーツ」という語については、【sweets】甘いもの。「ケーキ・菓子など。」を意味するものと記載されている・・・

 他方、「スイート」という語については、【sweet】①甘いこと、甘口。「②甘美なこと。快いこと。気持ちよいさま。」を意味するものと記載され、「スイート」という語を用いた語として、「-・コーン【~corn】トウモロコシの一品種。糖分を多く含む。-・スポット【~spot】ゴルフのクラブ・フェースやテニスのラケットなどの、球を最も効果的に打つことができる点。-・ハート【~heart】恋人(特に女性)。愛人。-・ピー【~pea】マメ科の蔓性観賞用一年草。シチリア島原産で、江戸時代末に渡来。葉はエンドウに似、先端は巻ひげとなる。桃色・白色・紫色・斑などの蝶形花をつけ、花後に莢を生じる。園芸品種が多い。ジャコウエンドウ。ジャコウレンリソウ。-・ホーム【~home】(特に新婚の)楽しい家庭。愛の巣。-・ポテト【~potato】①サツマイモのこと。②サツマイモで作った洋風菓子。サツマイモを蒸して裏漉しし、砂糖・卵黄・バターなどを加えて練り、オーブンで焼く。」が挙げられている・・・。

 上記の国語辞典の記載によれば、「スイーツ」と「スイート」は別の語として一般的に認識されており、また、「スイート」という語は、「①甘いこと、甘口。」の他に、「②甘美なこと。快いこと。気持ちよいさま。」などの意味を有し、「スイートハート」「スイートホーム」など、「甘いこと」以外の、「愛しい」「楽しい」の意味で用いられる例があることが一般的に認識されているものと認められる。

イ 実際の使用例

(ア) 「スイーツ」という語の使用例

 インターネット上で検索結果の多い「スイーツ」という語を含む用語の例として「人気スイーツ」があり・・・「絶対おすすめ!人気スイーツベスト20!」「人気スイーツをお取り寄せ」のように使用されている・・・「スイーツ」という語は、「ケーキ・菓子など」の意味で使用されている。

(イ) 「スイート」という語の使用例

 「スイート」という語が食料品との関係で使用される例としては、「スイートワイン」「スイートチョコレート」「スイートチリソース」など・・・があり・・・「スイート」という語は「甘い、甘口」の意味で使用されている。

(ウ) 「スイーツ」という語と「スイート」という語が同一作成者のウェブページで使い分けられている例

 アサヒグループホールディングス株式会社の「アウトドア!おつまみレシピ」の特集ウェブページにおいては、「アウトドアでも〆のスイーツ♪」・・・という表題の下に様々なデザートのレシピが紹介されている一方、「BBQが盛り上がるおつまみレシピ♪」・・・という表題の下に紹介された「鶏とシーフードのタイ風漬けこみダレ」のレシピ欄では、スイートチリソースとナンプラーが、「エスニック風。」と記載されている。

 ここで、「スイーツ」という語は、「甘いもの、ケーキ・菓子など」の意味で使用されているのに対し、「スイート」という語は、「甘い、甘口」の意味で、チリソースの味を表すために使用されており、双方の語は使い分けられている・・・(以下略)

(エ) 「スイーツパーティー」という語の使用例

 えひめ結婚支援センターのウェブページには、恋するスイーツパーティー」「100人の男女が出会う恋のスイーツパーティー!四国中央市中のスイーツ店から50種類以上のスイーツ&ケーキが大集合!食べ放題スイーツビュッフェでスイートな出会いをしましょう。・・・と記載されており、「スイーツ」という語は「ケーキ・菓子など」の意味で使用され、「スイーツパーティー」という語は、ケーキ、菓子などが提供され、それらを食べるパーティーの意味で用いられており、他方、「スイート」という語は、「甘美な、愛しい、楽しい」の意味で使用されている・・・(以下略)

 前記・・・のとおり、「スイーツパーティー」という語は、ケーキ、菓子などが提供され、それらを食べるパーティーの意味で用いられている。

(オ) 「スイートパーティー」という語の使用例

 大垣市のウェブページには、「令和2年度『水都おおがき♡縁むすび』第2回事業『スイートパーティー』、」「独身の男女の皆さんに素敵な出会いの場を提供する、かがやき婚活事業『水都おおがき♡縁むすび』-。今回のテーマは、『スイートパーティー』。人気の結婚式場で挙式ムード高まるスイートなパーティーに参加しませんか・・・と記載され、」「スイート」という語が、「甘美な、快い、楽しい」の意味で用いられ、「スイートパーティー」という語は、甘美な、快い、楽しいパーティーの意味で用いられている。

(カ) 以上によれば、実際の使用例において、「スイーツ」という語と「スイート」という語は、それらが他の語と結びつく場合も含めて区別して使用されており、「スイーツ」という語は、「甘いもの、ケーキ・菓子など」の意味で使用され、他方、「スイート」という語は、「甘い、甘口」の他、「甘美な、快い、愛しい、楽しい」という意味で用いられているものと認められる。そして、

「スイーツパーティー」という語は、スイーツ(甘いもの、ケーキ、菓子など)が提供され、それらを食べるパーティーの意味で用いられている。

ウ 小括

 そうすると、本件商標は、「スイーツ」と「パーティー」を二段書きにしたものであるから、「スイーツ」(甘いもの、ケーキ・菓子など)という名詞が強調された上で、その全体から、「スイーツパーティー」という語として認識され、スイーツ(甘いもの、ケーキ、菓子など)が提供され、それらを食べるパーティーという観念を生じるものと認められる。

 他方、引用商標は、「スイートパーティー」又は「SWEET PARTY」という語として認識され形容詞である「スイート」「SWEET」が必然的に名詞の「パーティー」を修飾する関係にあるから「スイート」なパーティーを意味し、「スイート」という語の意味のうち、パーティーを修飾する場合に当てはまる意味は、「甘美な、快い、愛しい、楽しい」という意味であるから、

「甘美な、快い、愛しい、楽しいパーティー」という観念を生じるものと認められる。

⑶ 称呼

 本件商標は「スイーツパーティー」の称呼を生じ、引用商標は「スイートパーティー」の称呼を生じる。本件商標と引用商標は、ともに9音(長音も促音(ッ)も1音として)からなる同音数であり、中間音の「ツ」と「ト」が相違するのみであり、「ツ」と「ト」はいずれもタ行の同行音で、比較的近い音であることを考慮すると、本件商標と引用商標は、称呼上、類似するというべきである。ただし、上記の差異である「ツ」と「ト」のそれぞれの前音は長音であって、比較的弱く発音される音であるから、当該差異音は、各々前音に紛れることなく比較的はっきりと発音され、聴取され得るものであること、前記・・・のとおり、「スイーツ」という語と「スイート」という語は別の語として観念され、実際にも区別されて用いられていることからすると、「スイーツ」と「スイート」は1音違いではあるものの、それぞれの音が表す観念の違いを認識することによって別の語として聞き分けられるものと認められることを考慮すると、その類似性の程度は高くないというべきである。

⑷ 類否の判断

 以上のとおり、本件商標と引用商標は、外観上明確に区別できるものであること、本件商標と引用商標は観念において明確な差異があること、本件商標と引用商標とは称呼において類似しているものの、その類似性の程度は高くないことを考慮すると、本件商標と引用商標は、外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察する場合には、同一又は類似の商品に使用された場合に、その商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれはないものと認められる。

したがって、本件商標を引用商標の類似商標と解することはできないというべきである。

第2 考察

判決は観念について、スイーツパーティーは、洋菓子等を食べるパーティーという観念を生ずるものであり、スイートパーティーは、甘く楽しいパーティーという観念を生ずるものであるとして、これらを区別して非類似との結論を導いた。また判決は、称呼については9文字中1文字の相違であり、タ行の同行音であることから、類似と判断した。これらの観念及び称呼についての判断は、いずれも首肯できるものである。

一方判決は、外観について、①引用商標が本件商標と異なり、英語併記であること、②本件商標は、「スイーツ」と「パーティー」との二段書きであるが、引用商標は「スイートパーティー」の一段書きであること、③「スイーツ」と「スイート」とが別の語として観念され、区別されて用いられていることを挙げ、非類似と判断した。しかし、このうち①は、判決自身が英語部分を排除して分離観察可能であることを認めているし、③は、本来観念の類否において判断されるべきものである。そうすると、外観非類似との判断は、専ら②から導かされたものであると言える。しかし、引用商標に係る「スイートパーティー」に含まれる「スイート」の語は、判決によれば、甘い、愛しいといった観念を生ずる形容詞であり、「パーティー」を修飾する関係にあるものであるので、需要者において「スイートパーティー」と一段書きされていても、「スイート」と「パーティー」に分離して観察することは容易である。このように考えると、判決が外観非類似とした根拠は薄弱であり、いずれにも転びうる。 判決は、結局のところ、「スイーツパーティー」と「スイートパーティー」が実際に区別して使用されていることを数多くの証拠から認定し、誤認混同しないとの価値判断をしたものと考えることができる。本判決と同様に、指定商品・役務の分野において一般に用いられている用語に係る商標の類否が問題となった場合、当該用語が実際に使用される態様を詳細に立証して観念の違いを明確にすることで、誤認混同を生じないとの結論を導き得るかもしれない。

(文責)弁護士・弁理士 森下 梓