【令和3年2月9日判決(東京地裁 平成30年(ワ)第3789号)(オリゴ糖事件)】

【キーワード】
ネットビジネス,品質誤認表示,信用棄損行為,不正競争防止法2条1項20号,不正競争防止法2条1項15号,アフィリエーター,アフィリエイト,アフィリエイト広告の違法性

1 事案の特徴

 本事案は,原告「株式会社北の達人コーポレーション」が,被告「株式会社はぐくみプラス」が行う広告表示について,不正競争防止法2条1項20号及び同項21号を根拠として,表示の差止,損害賠償等の請求を求めた事案である。

 この事案の特徴として,被告自身の広告表示だけではなく,アフィリエーターの広告表示の違法性が争われた点が,挙げられる。

 この点について,東京地裁は,以下のように判示した。

2 東京地裁の判断

「アフィリエーターは被告との契約に基づき被告の商品を紹介する者であり,少なくとも, 被告が本件行為4や本件行為5のように被告商品の特徴を具体的に記載した文書等をアフィリエーターに渡し,アフィリエーターが被告商品についてそれと同趣旨の記載をウェブサイト等でして被告商品を紹介した場合,アフィリエーターのその記載行為は,被告の不正競争の判断においては,被告がアフィリエーターを通じてした広告等の行為というべきであり,その内容に照らし,本件行為6(同ク)は被告がした広告等の行為ということができる。」

「以上から,被告は,平成26年7月から平成30年11月まで,故意により,被告商品の品質について誤認させるような本件品質誤認表示をして,被告商品を販売していたと認められる。」

3 検討

アフィリエーターとは,広告主の依頼を受けて,インターネットを通じて,成果報酬型の広告宣伝を行う者である。

各企業は,アフィリエーター経由で顧客を獲得するために,アフィリエーターに対し,商品説明を行い,大々的に宣伝してもらうことを期待する[1]。他方,アフィリエーターも,自身のウェブページ経由で商品が購入されると,成果報酬が得られるため,消費者の印象に残る特徴的な広告宣伝をしようとする。

この構造の特殊性ゆえ,アフィリエート広告は,行き過ぎた過剰な広告表現となることが社会問題とされており,行政では規制を強化する議論が進んでいる[2]

このような行き過ぎた過剰な広告表現に対して,司法的救済を求めようとした場合,全ての違法広告を止めさせるには,民事訴訟法の原則からすると,全アフィリエーターを被告にして訴訟提起する必要がある。

しかし,本件の被告は広告主のみの事案であるが,裁判所は,一定の条件を付しているとはいえ,「アフィリエーターのその記載行為は,被告の不正競争の判断においては,被告がアフィリエーターを通じてした広告等の行為というべき」であると判断を示し,アフィリエーターによる広告を被告がした広告行為と判断した。

このようにアフィリエーターの行為を広告主の行為と認めた条件としては,

裁判所は,少なくとも,

①広告主と,アフィリエーターとの契約の存在

②広告主が,商品の特徴を具体的にアフィリエーターに示したこと

③広告主から開示されて商品の特徴をアフィリエーターが消費者に開示したこと

が必要であると考えているようである。

ともあれ,一定程度の広告主の関与がある場合には,アフィリエーターの責任を広告主に帰責できることを示した点で,本判決はビジネス遂行上も有益な事例であろう。


[1] 大規模な売上がある商品だと,一商品に対し,数百人のアフィリエーターが起用されている例もある。

[2] 消費者庁では,令和3年6月10日から,「アフィリエイト広告等に関する検討会」が開催されており,現在も審議が続いている。

以上

弁護士・弁理士 高橋 正憲