【令和5年3月23日(知財高裁 令和4年(ネ)第10098号)】

(原審:東京地裁令和3年(ワ)第3418号)

【事件の概要】

 本件は、原判決別紙原告製品目録記載の各製品(原告各製品)を販売する控訴人が、被控訴人に対し、①原判決別紙被告製品目録記載の各製品(被告各製品)は控訴人の商品等表示として需要者の間に広く認識されている原告各製品の形態と同一であり、被控訴人による被告各製品の輸入及び販売は控訴人の商品と混同を生じさせる行為であって、不正競争防止法(不競法)2条1項1号に該当するものであり、また、②被控訴人が輸入又は販売する被告各製品は、原告各製品の商品の形態を模倣するものであるから、同項3号に該当するものであると主張して、不競法3条に基づいて被告各製品の販売、輸入の差止め及びその廃棄を求めるほか、不競法4条に基づいて1億円(不競法5条1項による推定)の支払を求める事案である。
 原判決は、①原告各製品は不競法2条1項1号の商品等表示に該当するものではない、②控訴人は、原告各製品の第4世代製品について自らの費用及び労力を投下してこれを開発し市場に置いた者とは認められないから、営業上の利益を侵害された者(不競法3条1項、4条)に当たらない、③原告製品第1世代製品の発売から3年が経過しているため、不競法2条1項3号は適用されない旨判断して、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人がこれを不服として、控訴の趣旨第2項ないし第4項の限度で控訴をした(なお書き省略)。

【判決文抜粋】(下線は筆者)

主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 原判決を次のとおり変更する。
2 被控訴人は、原判決別紙被告製品目録記載の各製品を販売及び輸入してはならない。
3 被控訴人は、前項の各製品を廃棄せよ。
4 被控訴人は、控訴人に対し、2000万円を支払え(原審では1億円の支払を求めていたが、当審で2000万円の支払請求に減縮した。)。
第2 事案の概要(略称は原判決による。)
(中略)
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
 引用に係る原判決第2の1の前提事実に加え、証拠(甲1、2、11ないし 21、23、27、28、36ないし42、48、56、57、乙6ないし2 1、26、27)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
⑴ア 控訴人は、平成21年11月30日に日用雑貨等の輸入及び販売等を目的として設立された合同会社である。
イ 被控訴人は、平成30年10月9日、家電等の輸入及び販売等を目的として合同会社として設立された。
⑵ア 控訴人が日本国内で販売してきたシーリングライトは、第1世代製品から第4世代製品まであり、第1世代製品は平成22年から平成24年までの間、第2世代製品は平成24年から平成27年までの間、第3世代製品は平成27年から平成30年までの間、第4世代製品は平成30年以降、それぞれ販売されている。 イ シーリングライトは、本体部分(発光部分、台座等)とシェード部分から構成されるものである。
(ア)シェード部分は、第1世代製品から第4世代製品まで変更がなく、原判決別紙原告製品目録の1ないし4の製品名ごとに異なる形状をしている。具体的には、原告製品1、2及び4のシェード部分の形状は、白色のポリプロピレンの平板を、中心部から放射状に多数の山又は谷ができるように鋭角又は湾曲に折り畳み、一層(原告製品2)又は大きさの異なる複数層(原告製品1、4)となるように配置した形状をしており、原告製品3は、多数の白色のポリプロピレンの平板を湾曲に折り畳み、全体としてバラ様の略円形に整えた形状である。
(イ)本体部分(発光部分、台座等)は、第1世代製品から第4世代製品までそれぞれの世代製品で異なっている。具体的には、①第1世代製品は、2段となった円形の台座に3個の電球が取り付けられたもの、②第2世代製品は、2段となった円形の台座に大小2つの環形蛍光灯が取り付けられたもの、③第3世代製品は、2段となった円形の台座に大小2つの環形LED光源等が取り付けられたもの、④第4世代製品は、フラットな円形台座に3つのU字形LEDモジュールが磁石で取り付けられ、台座側面に換気孔が設けられ、調光調温機能が付いたリモコンが付属するものである。
ウ 原告各製品(第4世代製品)の本体部分の台座は、中華人民共和国広東省内の工場で製造されており、発光部分のLEDライトモジュールは、同国内の複数の専門店で販売されている汎用品であるが、中国国内と日本国内では電圧が異なり、また、日本国内は天井ローゼット式であるため、電子部分及び土台は、日本仕様の設計となっている。
 控訴人は、後記⑶アの中国国内の業者に原告各製品(第4世代製品)の製造を委託するに当たり、パーツ業者との間で、安定器のワット数、リモコンの印字方法等について打ち合わせた。原告各製品(第4世代製品)のリモコンには、控訴人が原告各製品を販売するに当たって使用するブランド名「NobleSpark」のロゴが印字されている(なお、控訴人は、前記第2の3⑵アのとおり、リモコン及び安定器がパーツメーカーから控訴人に発送された旨主張するが、控訴人が指摘する書証(甲39ないし41)を含め、こうした事実を裏付ける証拠はない。)。
⑶ア 控訴人は、中国広東省中山市所在の中山市正久照明有限公司(本件中国法人)に原告各製品(第4世代)の製造を委託し、「Red Leaf Co.LTD」を通じて原告各製品を輸入し、平成30年以降、控訴人の店舗、オンラインショップ等で販売している。
 なお、控訴人と本件中国法人との間では、原告各製品の製造及び販売に関し、独占的販売契約又は流通契約の締結はされていない。また、原告各製品について、控訴人が商標権、意匠権等の何らかの知的財産権を有しているものとは認められない。
イ 控訴人が開設するオンラインショップのウェブページでは、原告各製品(第4世代製品)は、各シェード部分を強調する写真が複数掲載された上、商品説明欄には、「繊細で特徴的な形状のデザイン。まるで美しく開いた花のようです。この細かさが魅力で、そのエレガントさには思わず酔ってしまいそうです。比較的薄めで、圧迫感はあまり感じません。天井照明をこれに変えるだけでどこかヨーロッパ風な雰囲気が出そうです。LEDタイプなので明るく、距離があってもしっかりと照らしてくれます。(以下略)」(原告製品1)、「繊細で落ち着いたデザイン。どこかオーガニックな雰囲気を感じます。思わず酔いしれそうなほど魅力的な形状です。優しい光と形状に、癒されませんか?・・・他社製品とは一線を凌駕した、美しいデザイン」(原告製品2)、「大輪のバラをイメージした、ロマンチックなシーリングライトです。シェードのプリーツが花びらのように何層にも重なり、ゴージャスな気分にさせてくれます。灯りをつけなくても存在感のあるオ ブジェとして楽しめますが、夜のライトの美しさは格別です。立体的な花 びらの陰影がさらに際立って、まるでバラのブーケをプレゼントされたようにリッチな夜を楽しめます。」(原告製品3)、「直線的な形状のシェードが美しい、ノーブルスパーク社の2010年新作となる天井照明です。存在感がありますが、部屋の雰囲気を壊すことなく豪華な雰囲気を演出してくれます。」「シェードのプリーツ部分は4段になっているように見えます。」「細部までみると非常に細かいデザインとなっており、この細かさが高級感を醸し出しています」「中央のシェードを固定しているパーツは白ですが、光を通さない素材のため点灯時には黒っぽく見えます。」(以上、原告製品4)との記載がある。
⑷ア 被控訴人は、平成30年10月、「Globee(Hong kong) Limited」を通じて、本件中国法人から被告各製品の供給を受け、日本国内で販売した。
イ 原告製品1(第4世代製品)と被告製品1、原告製品2(第4世代製品)と被告製品2、原告製品3(第4世代製品)と被告製品3、原告製品4(第 4世代製品)と被告製品4は、それぞれ、安定器(ただし、ワット数は同じ)以外は、本体部分(発光部分、台座等)とシェード部分の構成が同一又は類似するといえる。
⑸ア デンマークのレ・クリント社は、1943年に創業された会社であり、日本の折り紙をヒントに、オイルランプの灯りを調節するため、プリーツ状にシェードを折り畳む照明器具を製造及び販売し、2003年にはデンマーク王室御用達となった。同社の製造及び販売する照明器具のシェード部分は、中心部から放射線状に多数の山又は谷ができるように鋭角又は湾曲に折り畳み、一層又は大きさの異なる複数層となるように配置されたもの、湾曲に折り畳んで全体が花びら様に整えた形状のもの等があり、このうち、「手折りランプシェード」のシーリングライトのモデル26は194 5年に、同モデル30は1955年に、それぞれデザインされたものである。これらのシーリングライトは、平成29年3月30日現在のカタログに掲載されている。
 原告各製品のうち、少なくとも原告製品2のシェード部分の形状は、レ・クリント社のモデル30と類似するものである。
イ 中国国内では、レ・クリント社の照明器具と類似する形状のシェード部分を用いた照明器具は、本件中国法人以外でも製造されて流通していた。
2 争点1(原告各製品の形態が控訴人の「商品等表示」(不競法2条1項1号)として周知であるか)について
⑴ 商品の形態は、本来的には商品の機能・効用の発揮や美観の向上等の見地から選択されるものであり、商品の出所を表示するものではないが、特定の商品の形態が、他の同種の商品と識別し得る独自の特徴を有し、かつ、その形態が長期間継続的、独占的に使用され、又は短期間でも効果的な宣伝広告等がされた結果、特定の営業主体の商品であることの出所を示す出所識別機能を獲得するとともに、需要者の間に広く認識されるに至ることがあり得るところであって、こうした商品の形態は、不競法2条1項1号によって保護される他人の周知な商品等表示に該当するものと解される。
⑵ 前記認定事実によれば、控訴人が日本国内で販売してきた原告各製品は、平成22年以降発売されているところ、原告各製品を構成するもののうち、本体部分(発光部分、台座等)は、世代製品ごとに構成が異なるものであるが、シェード部分の形状は、各世代製品間で共通しており、控訴人が開設したオンラインショップのウェブページ上でも、原告各製品の構成のうち、シェード部分の形状が他社製品と違う点を強調している(前記1⑶イ)ように、その外観であるシェード部分に特徴的な商品の形態があるといえる。
 他方で、原告各製品の第1世代製品を開始した平成22年から遅くとも被控訴人が被告各製品を日本国内で発売を開始した平成30年10月までの間における原告各製品の販売数量は明らかではなく、また、原告各製品の特徴的部分であるシェード部分のうち、少なくとも、原告製品2は、レ・クリント社が製造及び発売するモデル30と類似のプリーツ状のシェードであって、独占的にその形状が使用されてきたものとはいい難い
 これらの点を措くにしても、周知な商品等表示というためには、前記⑴のとおり、原告各製品が原告の商品であることの出所を示す出所識別機能を獲得するとともに、需要者の間に広く認識されるに至ることが必要であるところ、これらの点を認めるに足りる的確な証拠は見当たらない。控訴人は、長期間にわたり原告各製品に係る広告宣伝を行った旨主張し、Facebookで行ったとする広告に関する資料(甲46)を提出するが、そのとおりであるとしても、そもそも宣伝をすれば足りるというものではなく、宣伝等の結果、遅くとも被告各製品が発売された平成30年10月の時点で、需要者において原告各製品のシェードの形状が控訴人の商品であることを認識するに至ったことを証明する必要があるのであるから、控訴人の主張、立証は当を得ないものというほかない。したがって、その他の点について判断するまでもなく、原告各製品の商品の形態が不競法2条1項1号に規定する「商品等表示」に該当するとは認められない。
⑶ 以上によれば、原告各製品の形態が不競法2条1項1号の周知な商品等表示に該当するものとして、被控訴人による被告各製品の販売が同号の不正競争行為に当たることを前提とした控訴人の請求は、いずれも理由がない。
3 争点2(控訴人が「営業上の利益」(不競法3条、4条)を侵害された者に該当するか)について
⑴ 前記認定事実によれば、原告各製品(第4世代製品)と被告各製品は、安定器(ただし、ワット数は同じ)以外は、本体部分(発光部分、台座等)とシェード部分の構成は同一又は類似するものといえ、両製品間には実質的同一性が認められるため、不競法2条1項3号の「他人の商品の形態・・・を模倣した商品」の譲渡等に当たる可能性があるので、以下、検討する。
⑵ア 不競法2条1項3号は、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、輸入する行為等が不正競争行為に当たる旨規定するところ、その趣旨は、費用及び労力を投下して商品を開発し、これを市場に置いた者が、一定期間、投下した費用等を回収することを容易にして商品化の誘因を高めるため、費用及び労力を投下することなく商品の形態を模倣する行為を規制することにあるものと解される。そうすると、同号の不正競争行為であるとして差止め(不競法3条)又は損害賠償(不競法4条)を請求することができる者とは、自ら費用及び労力を投下して商品を開発し、これを市場に置いた者をいうと解するのが相当である。
イ これを前提として検討するに、前記認定事実によれば、原告各製品(第 4世代製品)と被告各製品は、本件中国法人で製造され、それぞれ中間業者を経て、日本国内に輸入され、発売されているものと認められる。
 控訴人は、原告各製品は本件中国法人に製造を委託したものであり、控訴人が多くのパーツに至るまで自ら設計し、パーツメーカーと使用について協議して決定し、これを本件中国法人に搬入して組み立てている旨主張するが、控訴人が、原告各製品の特徴的部分ないし重要部分というべきシェード部分について、自ら費用及び労力を投下して商品を開発したことを裏付ける証拠はない。控訴人とパーツメーカーとの間で安定器のワット数及びリモコンの印字等に関して協議がされたこと(前記1⑵ウ)は認められるものの、これらを原告各製品における特徴的部分ないし重要部分と位置付けることはできないし、控訴人が本件中国法人に委託して原告各製品を製造させるに至るまでの具体的なやり取り、控訴人又は控訴人が第三者に委託して作製させた原告各製品(特にシェード部分)の設計図や仕様書等は、いずれも証拠として提出されていない(第三者に委託して作製した原告製品1(第4世代製品)に関する台座の設計図(甲50)ですら、この設計図が原告製品1に関する設計図であると対応付けられる具体的な裏付けはない。)。
 また、前記認定事実によれば、原告各製品の特徴的な形状であるシェード部分に関して、少なくとも、原告製品2は、レ・クリント社のモデル30と類似するものであり、中国国内では同社のシーリングライトに類似する商品が流通していたことが認められるのであり、しかも本件中国法人を経営する【D】の陳述書(乙20)には、本件中国法人は、原告各製品のみならず、被告各製品及びこれとデザインの似たシーリングライトを製造していること、これらのシーリングライトは約20年前にヨーロッパの会社が開発したモデルの一つであり、それ以降、中国の多くの工場で類似する製品が製造されていること、本件中国法人は、特定の顧客との間で独占販売契約を締結することなく、各社に対して上記シーリングライトを販売していることが記載されているのであるから、控訴人は、なおさら、原告各製品(特にシェード部分)を自ら企画し、設計したことを立証しなければならないところ、前示のとおり、この点に関する的確な証拠は存在しない
 そうすると、その他の点について判断するまでもなく、原告各製品(第4世代製品)を製造及び販売するに当たり、控訴人が自ら費用及び労力を投下して商品を開発したと認めることはできないというほかなく、これに反する控訴人の上記主張は理由がない。
 なお、前記1⑶アのとおり、控訴人と本件中国法人との間では、原告各製品の製造及び販売に関し、独占的販売契約等が締結されたとは認められないのであるから、これまで説示したところによると、原告各製品を製造した本件中国法人が、控訴人の商流とは別の香港業者からの注文を受けて、原告各製品と類似の被告各製品を製造し、香港業者を通じて被控訴人が輸入したとみることも可能な事案であり、そうすると、そもそも被告各製品が原告各製品に「依拠して」作製されたと認めることもできないから、被告各製品が不競法2条1項3号の「他人の商品の形態・・・を模倣した商品」に当たるということもできない。
⑶ 以上によれば、被告各製品が不競法2条1項3号に規定する原告各製品(第 4世代)の商品の形態の模倣に当たるとして、被控訴人に対し、被告各製品の差止め(不競法3条)及び損害賠償(不競法4条)を求める控訴人の請求は、いずれにしても認められない。
4 結論
以上によれば、控訴人の請求は、その他の争点について判断するまでもなくいずれも理由がないから、棄却されるべきである(なお、念のため付言すれば、口頭弁論終結後に控訴人から提出された主張書面等を検討してみても、前記認定は左右され得ない。)。
 よって、原判決は結論において相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。

【解説】

 本件は、同一の形態のシーリングライトを販売したことが不正競争防止法2条1項1号及び3号の不正競争に該当することを理由とする差止請求等の控訴審であり、原審(東京地裁令和3年(ワ)第3418号)も当欄で紹介させていただいた。
 争点1(原告各製品の形態が控訴人の「商品等表示」(不競法2条1項1号)として周知であるか)について、「商品等表示」として周知であるための要件は、原審と同じである。原審では、「原告各製品のシェード部分の形状が他の同種商品と比べて顕著に異なることを基礎付ける事情を認めるに足りる証拠はない」と判断されたが、控訴審では、「その外観であるシェード部分に特徴的な商品の形態がある」と判断されている。しかし、原告各製品の販売数量は明らかでなく、類似する製品もあるため独占的にその形状が使用されてきたとはいい難いとされ、独占性までは認められていない。
 また、周知性については、原審では、「SNSによる原告各製品に係る宣伝広告の期間、内容及び効果を認めるに足りる証拠もない(Facebookで行ったとする広告に関する資料(甲46)を見ても、具体的にどのような広告がどの程度行われたのかは明らかでない。)。」と判断されているところ、控訴審でも「Facebookで行ったとする広告に関する資料(甲46)を提出するが、そのとおりであるとしても、そもそも宣伝をすれば足りるというものではなく、宣伝等の結果、遅くとも被告各製品が発売された平成30年10月の時点で、需要者において原告各製品のシェードの形状が控訴人の商品であることを認識するに至ったことを証明する必要がある」と判断され、周知性が否定されている。

 このように、控訴人は、原審の判決で指摘された主張・立証の不備について、控訴審では一部対応しているが、まだ十分であるとはいえず、裁判所には、原告各製品の販売数量、特徴的なデザインが独占的に使用されていたこと、需要者において原告各製品のシェードの形状が控訴人の商品であることの認識があったこと、の立証がされていないと判断された。これらの、不足するとされた点は、「商品等表示」(不競法2条1項1号)として周知であること、の立証に必須な項目であるといえる。

 争点2(控訴人が「営業上の利益」(不競法3条、4条)を侵害された者に該当するか)について、原審のご紹介では省略したが、不正競争行為であるとして差止め(不競法3条)又は損害賠償(不競法4条)を請求することができる者については、裁判所は、原審と同様、「自ら費用及び労力を投下して商品を開発し、これを市場に置いた者」との規範を示した。

 控訴人は、安定器のワット数及びリモコンの印字等に関して協議がされたことは示したものの、原告各製品の特徴的部分ないし重要部分であるシェード部分を自ら企画し、設計したことを立証しなければならないところ、この点に関する的確な証拠を提出することができず、控訴人が自ら費用及び労力を投下して商品を開発したとは認められなかった。

 以上のとおり、原判決は結論において相当であり、本件控訴も理由がないから棄却とされた。この結論は妥当であると考える。

 本件は、原審の判決で指摘された主張・立証の不備について、控訴審で控訴人が対応した(が結論は変わらなかった)例として取り上げさせていただいた。

以上
弁護士 石橋茂